あれこれ考えすぎ、ストレスがたまっていくことは珍しくありません。ふらっと入ったお店でA定食を頼むか、B定食を頼むか……そんなささいな選択ですら、人によっては難しく考えてしまいがちです。迷った揚げ句、A定食を選び、配膳された実物を見て、「何か思っていたのと違う。B定食にすればよかった」なんて思おうものなら、せっかくのご飯もおいしくなくなってしまいます。ブルース・リーではないですが、「考えるな、感じろ」。直感によるチョイスも、ときには大事でしょう。
ラドバウド大学のダイクスターハウスらは、「考えすぎない無意識の判断を軽視することはできない」という実験結果(2009年)を明らかにしています。実験では、被験者に4つのタイプの異なる中古車について説明を行ったのですが、うち1台だけは明らかにお買い得だとわかる車を交ぜました。その際、片方のグループには考える時間をたっぷり与え、もう片方のグループにはパズルをさせて、考える時間をあまり与えないようにしました。
まず、難しい説明をせずに選んでもらったところ、どちらのグループもお買い得の車を選ぶ割合に差はありませんでした。
一方で、燃費やトランクのサイズなど細かい部分も含めて複雑な説明をした後、再度選んでくださいと指示をすると、お買い得の中古車を選んだ人は25%以下に減ってしまいました。つまり、4つの中から当てずっぽうに選ぶのと変わらない確率だったのです。
ところが、パズルをやらされ、考える時間を奪われたグループは、情報が増えても60%の人がお買い得車を選べたのです。あれこれと考えさせる時間を奪い、あえて関係のないパズルをさせたことで、彼らは不要な情報を捨てて、重要な情報にだけ集中して選択できたとダイクスターハウスらは分析しています。
賢い判断をするためにたくさん情報を集めても、逆に考えすぎてドツボにハマり、判断を誤ってしまう。考えすぎてしまうから、“情報の沼”に足を取られる。ですから、自分の直感を信じることも大切なのです。
もう一点。「直感」という言葉があります。端的にいえば、外から降ってくるひらめきのようなもの。そして、内から湧いてくるものが「直観」です。
実は、後者の直観は、冷静な状況分析や論理的思考の上に成り立つもので、鍛えられると研究で明らかになっています。
理化学研究所が行った実験(2012年)では、将棋のプロ棋士とトップクラスのアマチュア棋士の脳活動の間に、違いがあったと報告しています。前者の方が、はるかに盤面を瞬時に判断して最善の一手を導き出す直観的思考力を備えていたそうです。
これは、長期間訓練した熟練度の差といわれています。熟練度を高めていけば直観力が高まるのですから、自分の「直感」を信じつつ、「直観」を培うために経験の積み重ねもおろそかにしないように。情報過多な時代をストレスフリーで生きるには、直感&直観が大事ですよ。
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