間違いなくやってくる新型コロナ「第6波」で備えるべきポイントは?

高齢者の8割がワクチン接種を完了したが…
高齢者の8割がワクチン接種を完了したが…(C)共同通信社

 新型コロナウイルスの新規感染者数が全国的に減少傾向にあり、第5波はピークアウトの様相を呈している。だが、これで一安心というわけにはいかない。専門家の間では、これから冬にかけて第6波が到来すると予想されている。いまから備えておきたい。

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「いちばん悪い事態を想定して備えていくことが重要で、第6波に向けて気を緩めないで準備するべきだ」

 9月14日の会見で、東京都医師会の尾崎治夫会長はこう警鐘を鳴らした。冬場には再び感染が拡大する要因がいくつも指摘されているからだ。

 まず、気温が下がり、空気が乾燥する冬は、ウイルスの生存率が高まるうえ、長時間にわたって空気中を漂うことができるようになるため感染力もアップする。冬は生きたウイルスが長時間広い範囲に浮遊する季節なのだ。

 そうした環境に加え、ワクチンの効果が切れてくるタイミングに突入する。東邦大学名誉教授の東丸貴信氏は言う。

「第5波が一段落した要因はいくつか考えられますが、人々の警戒と自粛に加えワクチン接種が一因なのは間違いないでしょう。9月13日時点では、2回接種を終えた人が51.6%、1回接種は63.8%に達し、とくに優先接種が進められた65歳以上の高齢者は、少なくとも1回接種した割合が89.7%に及んでいます。厚労省は、高齢者へのワクチン接種により、7、8月の2カ月間で感染者10万人以上、死亡8000人以上を抑制したと推定しています。しかし、ワクチン接種によって産生された中和抗体の量=抗体価は3カ月から6カ月で減少するといわれているため、これから冬場にかけてワクチンの効果が弱くなる懸念があるのです」

 米ファイザー社は、ワクチンの効力について2回目接種から2カ月間の発症予防効果は96%で、4カ月後は90%、半年後は84%というデータを公表している。

 また、英オックスフォード大学の研究チームは、ファイザー社製ワクチンを2回接種した人は、接種していない人に比べて1カ月後の有効性は90%高かったが、2カ月後は85%、3カ月後は78%に効果が落ちたと発表。米ブラウン大学の研究では、2回接種から6カ月後には抗体量が84%以上も減少したと報告している。

「都内では、すでに8月から高齢者の感染が再び増え始め、2回目のワクチン接種後に感染するブレークスルー感染も確認されています。しかも、いま接種を進めているワクチンは、もともと従来株に対して製造されたもので、8月に猛威を振るったデルタ株にもある程度の効果があったため流用している状況です。第6波で流行が予想されているラムダ株(ペルー型)やミュー株(コロンビア型)、デルタ株が新たに変異したデルタプラスに対してどこまで効果があるかはわかりません。実際、ワクチンの有効性はラムダ株で5分の1、ミュー株で7分の1まで低減させるという報告があります」(東丸貴信氏)

■冬は徹底した換気が重要になってくる

 ちょうどワクチンが効かなくなってくるタイミングで、人流が活発になる年末年始を迎えることも不安材料だ。

「ワクチン接種が終わって安心したのか、昼間なら問題ないだろうと密着状態で会食している人をたくさん目にします。そんな感覚のまま忘年会や新年会など人が集まる機会が多くある年末年始に突入すると、第6波は第5波を超える感染者数になり、重症者や死亡者も爆発的に増える懸念があります」(東丸貴信氏)

 感染再燃の条件が整う今冬は第6波が到来すると想定し、あらためてしっかり感染対策を講じたい。

「いま新型コロナウイルスの感染経路はエアロゾルを介した空気感染(飛沫から水分が蒸発して生成する粒径5マイクロメートルより小さい粒子による感染)とされています。感染力が高い変異株はマスクによる予防効果は小さくなっているため、他者との距離=ソーシャルディスタンスと換気がこれまで以上に重要です。マスクをきちんと装着したうえで、会話は短時間で済ませ、多人数で集まることを避ける。窓を閉め切りにせず、複数の窓や扉を常に5センチほど開けて空気の流れをつくり、扇風機を使って室内の空気を屋外に送り出すことを心がけましょう」(東丸貴信氏)

 議論があるワクチンの3回目接種や、PCR検査の再拡充、感染者の隔離・治療体制の整備は、第6波に間に合いそうもない。まずは、個人個人が感染対策を見直し、あらためて徹底させることが大切だ。

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