がんと向き合い生きていく

コロナ患者を診ているがん専門医からの便りで考えたこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある病院でがん診療をしているA医師から、こんなメールが届きました。

「先生! 30代の男性が車の中で亡くなっていたのが見つかり、PCR検査で陽性でした。男性の妻は感染して入院中で、NHF(ネーザルハイフロー=鼻から高流量の酸素を入れる装置)中です。少し良くなってきました。1歳のお子さんも入院させました」

 突然の夫の死……母と子は、これからどう生きていくのでしょうか?

 これまでがんを専門にしてきたA医師も、コロナ患者の診療で大変な苦労をされています。

 先日、こんな報道がありました。PCR検査で陽性判定された40代の男性は、同居中の両親がいる実家には戻らず、都内某区の勤務先でひとり過ごしていましたが、数日後、死亡しているのを家族が発見したそうです。

 保健所は複数回、男性に電話をかけ、連絡が取れなかったのですが、両親や警察には連絡せず対応を打ち切ったといいます。男性の父親は「行政は何もやらないんだから、もっと早く診てやってくれていれば」と語ったそうです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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