最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

患者はその場ですべてを聞いて判断し、納得しなくてもいい

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 リアルタイムではさして気にせず流して聞いているような内容も、その言葉が示す状況が来たときに再び伝えると、「そういえばあのとき先生が、ああ言っていた」と、版画の絵が浮かび上がるように患者さんにイメージが伝わり、ストンと腹の底に落ちる――。これが、刷り込みコミュニケーションです。

 患者さんはその場で一度にすべてを聞いて判断し、納得しなくてもいいのです。私たちが何度も何度も話をし、その人が持っている価値観やそのときの気持ちに添って、話を持っていきます。

 病院では、先生を拘束しては悪いと思って、満足に聞けなくなりがち。でも、自宅だとゆっくり話せます。こちら側も、「今日は家族が集まるから」「体調も良くて話ができそうだから」と、診療をちょっと長めに取るなどスケジュールを工夫します。

 大学病院から紹介された患者さんがいました。奥さんと2人暮らしの85歳の男性で、末期の急性混合性白血病。病院にいつでも戻れるように申し送りした上で、在宅医療がスタートしました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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