数字で読む新型コロナ

第3波より第5波の新型コロナウイルスの方が怖いのは本当か?

(C)kazuma seki/iStock

 武漢型の2倍の感染力を持つデルタ株が広がり、10代未満の子供の感染者や2回のワクチン接種完了者のブレイクスルー感染が目立つようになった第5波の新型コロナ感染症。冬の第6波には1日1万人以上の新規感染者が出るとの予想もある。新型コロナは以前より狂暴化しているのか?

 9月20日現在、日本での累計感染者数は167万259人で死亡者数1万7197人、トータルの死亡率は1.02%である。一方、世界中の累計感染者数は2億2859.5万人で死亡者数は469.3万人。死亡率はおおよそ2%である。

 米国(同4288.4万人、同67.3万人、同1.5%)、英国(同746.4万、同13.5万人、同1.8%)、フランス(同704.3万人、同11.6万人、同1.6%)、ドイツ(同414.9万人、同9.2万人、同2.2%)と比べても日本の死亡率は依然として低いのがわかる。

 では、日本の季節性のインフルエンザと比べるとどうか? 2019~2020年にインフルエンザで医療機関を受診した感染者数は約728万人、2018~2019年は約1200万人とされる。

 厚労省の人口動態統計によると、インフルエンザで死亡する「直接死」は2019年で3575人、2018年は3325人。これだと2019年の致死率は0.04%、2018年のそれは0.025%となり、新型コロナの死亡率の方がかなり高いことになる。

 ただし、一般的にインフルエンザに感染したことにより持病が悪化して亡くなる「関連死」は毎年1万人程度だと言われている。この「関連死」を含めて計算し直すと、2019~2020年の季節性インフルエンザの致死率は0.17%、2018年~2019年は0.1%となる。

 それでも、新型コロナの致死率は季節性インフルエンザの6~10倍となり、まだまだ新型コロナの死亡率は高く、怖い病気ということになる。

■第5波では感染者が2.7倍に増えた反面、死者数は半分へ

 しかし、日本の死亡率1.02%はあくまでこれまでのトータルでの話。直近の死亡率はどうか? 感染力が強いとされるデルタ株が日本に登場する前の第3波と登場後の第5波とで比べると第5波の死亡者数や死亡率がダウンしているのがわかる。

 例えば第3波の期間を2020年11月5日~2月28日(90日)、第5波を6月22日~9月19日(90日)として累計感染者数、死亡者数、死亡率で比べるとどうなるのか? 第3波は(同32万7914人、同6092人、同1.85%)、第5波(同88万9374人、同2748人、同0.3%)で感染者数は2.7倍に増えたが、死者数は半分以下、死亡率は6分の1以下に減少したことがわかる。

 しかも、第5波の死亡率と季節性インフルエンザのそれと比べると3倍差までに縮小している。弘邦医院の林雅之院長がいう。

「第5波が第3波よりも死者数や死亡率が減少している原因は新型コロナウイルスそのものが人と共存するために病原性を弱めたのか、ワクチンや治療薬や治療方法が進歩したからなのか、あるいはその両方なのか、はわかりません。しかし、新型コロナが未知なるものだった時期は過ぎて、ヒトがコントロールできる方向に向かいつつあるのではないでしょうか。新型コロナの感染経路のひとつはエアロゾルを介した空気感染であるといわれています。だとすれば、空気が乾燥し、密閉した部屋に人が集まりやすい秋から冬に患者数が増えることは当然です。その意味では1日の新規感染者数が今年の秋以降に1万人になるかもしれません。しかし、その多くは軽症者です。患者数が増えれば重症化する人や亡くなる人も増えるかもしれませんが、必ずしも感染者増の割合と同じように急激に増えるとは思いません。すでにワクチンの効果もハッキリして治療薬も整いつつあります。軽症者の病状が急変したときにしっかり対応できるよう、病床を確保し、軽症者の管理をインフルエンザ同様かかりつけ医が行うようにしてかかりつけ医の判断で重症者を専門病棟のある病院に送るようにすれば、新型コロナは出口に向かうのではないでしょうか」

 新型コロナは1年半前の未知なるウイルスではない。対抗手段も揃いつつある。そろそろ医療体制も通常に戻すための議論を始めてもよいのではないか。

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