進化する糖尿病治療法

子供に頼れないから…老親が健康維持のためにやっていること

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「ウチの両親、私よりも健康で長生きする気がします」

 40代後半のAさんから、彼女のご両親のお話を聞きました。大阪で2人で暮らすご両親は、76歳(父)と73歳(母)。父親をT雄さん、母親をK子さんと呼びましょう。

 T雄さんは中学卒業後に就職し、就職先の会社から高校に通わせてもらったそうです。一方、K子さんは高校生の時に母親を心臓病で亡くし、父親と弟2人の4人暮らしに。家事一切を担い、農協に勤めながら短大の夜間部を卒業。

 Aさんによれば、彼女と2歳年下の弟が就職するまで、両親が自分のことにお金を使っているのをほとんど見たことがないそうです。当時はどこの家庭もそうだったかもしれませんね。Aさんは大学まで、弟さんは大学院まで進学しており、お父さんの給料だけでその学費を捻出するのは大変で、お母さんのK子さんは、早朝から深夜までミシンを使った内職をしていたといいます。

 さて、現在。Aさんも弟さんも結婚し東京に住んでいます。ご両親は「娘、息子には頼れない。何かあっても自分たちで対処しなければ」と腹をくくっている様子。だからか、日頃から非常に健康に気を配った生活を送っているそうです。

 ご両親は毎朝、6時前後に起床。顔を洗って身支度を整えたら、6時30分から始まるNHKのラジオ体操に合わせて体を動かします。その後は「ゴキブリ体操」という体操を実施。Aさんが「ゴキブリ体操って?」と両親に尋ねると、「ひっくり返って足をばたつかせているゴキブリみたいに両手両足をバタバタさせるねん。テレビで見て、ラジオ体操の後にやるようになってん」。

 Aさんがネットで見つけた「ゴリラ体操(ゴリラになったつもりで、中腰の姿勢でひざを曲げ伸ばししたり、ウエストをねじる)」も良さそうと伝えると、さっそくゴリラ体操も日課に。

 1日3回の歯磨きの間はスクワット。夕方には、2人で近所を1時間ほど散歩。夜寝る前には念入りにストレッチ。さらに、T雄さんは1時間ほどで登れる近場の山へ時折出掛け、K子さんは週4回は近所のスポーツジムへ泳ぎに行きます。

■コーヒーには牛乳をたっぷり

「食事はごく薄味。畑で野菜を育てているので、旬の野菜料理が多い」(Aさん)

 薄味嗜好は昔からで、娘のAさんもそれを受け継いでいます。T雄さん、K子さんともに痩せ形ですが、テレビで「高齢者はタンパク質を中心に食べないとフレイルやサルコペニアになる」と紹介されているのを見てから、コーヒーは牛乳たっぷり、味噌汁には豆乳を加え、肉、魚、乳製品のいずれかを意識して毎食取るようにしている。

「『○○○がいい』と聞くと、過剰にならない範囲で日常生活にすぐ取り入れる。私が10年くらい前に、タマネギを電子レンジで加熱して凍らせた『タマネギ氷』が血管にいいんだってと言ったら、それ以来ずっと『タマネギ氷』を作っていて、納豆にかけて食べているんです。根っからの関西人である両親は納豆を好きじゃなかったんですが、体にいいからと何十年も食べ続けています」

 T雄さんは無口ではあるものの、定年退職後はふとしたことで再会した小学校の同級生たちと、日中なら何時間でも1000円というスナックでカラオケの会を定期的に開いており、K子さんはスポーツジムの友達と喫茶店でお茶を飲みながらおしゃべり会(コロナ禍の今はオンラインで)。

「私たち子供が巣立ってからは、両親ともに友達との交流も多い。また、夫婦で格安バスツアーなどにも出掛けたりして楽しそう。運動や食事に加え、楽しく暮らすのが、健康で長生きする秘訣かもしれません。ひとつでもいいから取り入れたいと思います」(Aさん)

 コロナ禍でさまざまなことが実施できません。だからこそ、長続きすることをひとつでも実施するといいですね。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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