歯周病対策の歯磨きは1日1回でいい バイオフィルムを破壊

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナで歯科医院への通院をやめている人もいるだろう。自宅でケアするために知っておくべきことは? 大手前短期大学歯科衛生学科の関根伸一教授に聞いた。

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「歯周病対策を考えるなら、歯磨きは1日1回でいい。時間を十分に取れるタイミングで、しっかり時間をかけて、念入りに磨いてください」

 1日1回? 半信半疑の人もいるのではないか。関根教授によれば、歯周病は数種の細菌がコミュニティーをつくって増殖した膜状の「バイオフィルム」が原因で起こる。「歯垢(プラーク)」という言葉を聞いたことがあるだろうが、それもバイオフィルムのひとつだ。バイオフィルムは、食後8時間ほどで生成される。これを放置すると石灰化し、「歯石」になる。歯石は死んだ細菌の塊で、表面が凸凹としておりバイオフィルムが付着しやすい。歯石の上にバイオフィルムが付着して石灰化、さらに大きな歯石になり、歯茎の炎症を招き、歯周病へと至らせる。

「バイオフィルムが歯石になるまで2~3日かかります。歯石になるとプロの手を借りなければ落とせませんが、バイオフィルムの段階なら自分で対応できる。歯石になる前に、1日1回の歯磨きでバイオフィルムを破壊するのです」

 バイオフィルムは台所の三角コーナーのヌルヌルに例えられる。あれは水を流した程度では落ちず、タワシなどでこすらなくてはならない。バイオフィルムも同様で、歯ブラシで念入りにこすらなければ破壊できない。

「チャチャチャッと簡単に歯磨きを済ますのでは、歯周病対策になりません。『1日1回でいい。時間を十分に取れるタイミングで』と言うのは、そのためです」

■虫歯対策には毎食後に「チャチャチャッ歯磨き」

 一方、虫歯対策ではチャチャチャッとした歯磨きも有効。食後、口腔内が酸性に傾き、虫歯菌が活動しやすい環境になるが、歯磨きをすぐすることで、速やかに中和される。虫歯がよりできやすい小学生くらいまでは、毎食後の「チャチャチャッ歯磨き」を。もちろん毎食後、念入りに磨ければなおいい。

「虫歯対策で見落としがちなのが、70代くらいからの高齢者です。この年代は唾液の分泌量が少ない。唾液は口腔内のpH緩衝作用や自浄作用、抗菌作用などがあり、歯周病に対してもそうですが、虫歯に対しても抑制効果があります。つまり唾液が少ないということは、歯周病、虫歯ともになりやすい」

 1日1回の念入りな歯磨きに加え、毎食後の歯磨きも必要。一般的に唾液の分泌量が少なくなるのは高齢になってからだが、コロナのストレス、在宅勤務やマスク生活による会話の減少は唾液の分泌量を少なくする。若い世代でも口の中が乾き気味であれば、毎食後の歯磨きも取り入れたい。

 虫歯対策としては、歯磨き粉の選び方も重要。

「以前は、歯磨き粉を多く使うと歯磨きがぞんざいになりかねないので、少なめにと言われていました。現在は、虫歯予防になるフッ素が含まれている歯磨き粉を十分量使い、すすぎも軽めに。フッ素は『PPM』として表記されており、PPM1450のものを選ぶといいでしょう」

 歯周病・虫歯両方の対策として、2~3カ月に1度は市販の「染め出し液」を用いて、ブラッシングが正しくできているかをチェックする。染め出し液は、歯の磨き残しの部分がないかを調べるもので、大型のドラッグストアなどで購入可。

「3~6カ月ごとに歯科医院へ通えれば理想的ですが、仕事や家庭の都合で難しい人もいるでしょう。その場合は1年に1回、歯科医院に行くようにし、ホームケアとして染め出し液を利用してください」

 磨き残しの部分を歯ブラシだけで対応できなければ、フロスや歯間ブラシも併用する。歯周病は糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、がんなど全身の病気にも影響を及ぼすことが明らかになっている。しっかり対策を講じたい。

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