病気を近づけない体のメンテナンス

腎臓<上>腎臓を守る食事法 国立大医学部教授がポイント指南

肥満のもとになる肉を控え、油の少ない和食を(C)日刊ゲンダイ

 尿を作る「腎臓」。体内で生じる老廃物を尿として排出する重要な働きをしているが、それだけではない。ホルモンを分泌したり、血圧を調節したり、体内の環境を整えている。

 さらに、尿を排出することで水分調節をしたり、体内の電解質をコントロールする働きも担っている。

 しかし、加齢や悪い生活習慣による肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病の罹患などによって、腎機能が慢性的に低下(慢性腎臓病)すると、自然に元に戻ることはない。適切な治療を受けなければ腎機能は徐々に低下し、「腎不全」になると、透析治療や腎移植を行わなければ生命を維持することができない。

 筑波大学医学医療系・腎臓内科学の山縣邦弘教授が言う。

「最近は生活習慣病から慢性腎臓病を発症する人が増えています。生活習慣病をきちんと改善できれば、腎機能の低下を食い止めることは十分可能です。そのためには生活習慣の改善が欠かせません。特に重要なのが『適切な運動と食生活』。腎臓は食生活の影響を非常に受けやすい臓器であると同時に、加齢とともに悪化する慢性腎臓病患者さんたちには、運動不足による筋肉量低下が大きな問題だからです」

 治療による生活習慣病のコントロールと同時に、腎臓を守る食生活上の改善の基本的なポイントは次の4つだという。

①肥満を解消する…適正体重は「身長(メートル)×身長(メートル)×22」から算出。

②塩分を控える…塩分のとりすぎは高血圧を招き、腎臓に負担をかける。高血圧の人の1日の塩分量は6グラム未満が目標。

③タンパク質をとりすぎない…タンパク質は体内で使われた後で腎臓から排出されるため、とりすぎると腎臓の負担になる。腎機能の指標である「GFR(糸球体ろ過量)」が60未満(軽度低下)の人は、とりすぎに注意。

④エネルギー量を調整・確保する…タンパク質の摂取量を減らすと、全体のエネルギー量も減ってしまう。体に必要なエネルギー量をしっかりとる工夫も大切になる。

 では、食生活は具体的にどう改善するべきか。「まずは、日常生活での適度な運動習慣を身につけ、次いで食べすぎのないように食事の量を見直すことです。肥満気味の人は“エネルギー過多”の食事を続けていると、常に腎臓に負担をかけることになります。エネルギーをつくるのは、米・パン・麺類・いも類・砂糖などに多い『糖質』、肉・魚・バター・植物油などに多い『脂質』、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などに多い『タンパク質』の3つ。これらのバランスは、糖質60%、脂質20~25%、タンパク質15~20%が推奨されています。タンパク質はなるべく植物性のタンパク質をとることで、体内の環境が守られ、腎障害の進行が抑えられるといわれています。痩せることを目的にエネルギー制限だけを実施すると、かえって体調不良になることがあるので、適切な運動を併用することを忘れないでください」

 1日3食、バランスを考えた食事をとるのはそう簡単ではない。そこで、基本的に「和食を食べること」が勧められる。和食なら、ごはん、肉や魚、卵、野菜、大豆製品といったさまざまな食品をとりつつも、“肥満のもと”となる肉や油は少なく、食物繊維はしっかりとれ、植物性タンパク質を多くとれるというわけだ。

 和食でも、次のポイントを押さえるべき。

【主食】パンや麺類ではなく、「ごはん」が理想。1食当たり、男性は茶碗に軽く2杯、女性は1.5杯までを目安にする。

【主菜】肉料理より魚料理を選ぶ。魚の脂に含まれる「EPA」は血液をサラサラにする効果、「DHA」は血中の中性脂肪やコレステロールを減らす効果がある。1日1回は魚料理を。

「肉を食べるなら赤肉はなるべく避け、豆腐などの植物性タンパク質を多くとること。また、ハムやソーセージなどの加工肉も避ける。これらを注意することで腎機能の低下に伴うリンの負担を減らし、腸内の環境も整え、腎障害リスクを減らすことが可能です」

【副菜】きんぴらごぼう、ひじきの煮物、酢の物など、簡単にできるものでいいので2品以上とる。

【汁物】定番の味噌汁は塩分が多いのが難点。野菜や海藻、きのこ、大豆製品など、「具だくさん」にすれば汁の量が減るので減塩になる。ただし、味噌汁は「1日1回」にとどめるようにする。

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