以前の出来事ですが、ある大病院で治療を受けていたがんの患者さんが、治療中に転院を希望されてきました。紹介状を見ると、しっかり治療されていて問題はありません。お話を伺うと、「個室料金を払うのが大変だから転院したい」とのことでした。
この患者さんのがんでは、白血球が少ない時はどうしても個室が必要になってきます。その個室料金が高額なのです。本来、患者の治療上の必要により、あるいは病棟管理の必要性(他の患者に感染する可能性など)から個室に入院させた場合、患者はその差額ベッド代は払わなくてよいのですが、その患者さんはすでに支払いの同意書にサインし、さらに治療は繰り返し長期に及ぶことから、支払うのが大変だというのです。また、サインした同意書を撤回することは勇気がいるので難しいとのことでした。
繰り返しになりますが、差額ベッド代は患者が希望して個室に入院した場合にかかる費用で、正式には「特別療養環境室料」と呼ばれ、全額が自己負担となります。
がんと向き合い生きていく