コロナ禍の子供の「活動量低下」が肥満とゲーム障害を増やす

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナ禍で子供の活動量が減少している。都内小学校に勤務する教師は「体力が低下しているのか縄跳びや跳び箱で骨折する子供もいると聞いている」と話す。長期的、短期的にさまざまな弊害を招くと指摘するのは、早稲田大学スポーツ科学学術院運動器スポーツ医学研究室の鳥居俊教授。話を聞いた。

「子供の活動量減少は、予防医学領域ではかねて将来的な生活習慣病増加につながると懸念されていました」

 というのも、子供時代に運動習慣がない人は、大人になっても運動習慣を持てない傾向があるからだ。子供時代に運動が嫌いだった人は、健康診断の数値が高かったり肥満だったりしても、運動を日常に取り入れにくい。始めたとしても、三日坊主になりやすい。

 骨粗しょう症のリスクが高くなることも研究で明らかになっている。

「骨量は20歳代をピークに、その後は加齢とともに減っていく。それまでに骨量をどれだけ高めておくかが重要です。骨量は身長増加のピークより1年程度遅れて最も増える時期を迎え、平均では男子で中学2年生ごろ、女子で小学6年生ごろとなるため、この時期に活発な運動と適切な栄養摂取が必要となります」

 しかし、部活動などで適度に運動している子供がいる一方で、体育の授業以外の運動量がゼロという子供も少なくない。それでは骨量が十分に高まらず、高齢になるのを待たずして骨粗しょう症となりかねない。運動器の障害で移動機能の低下をきたすロコモティブシンドローム(ロコモ)も早くに起こりやすくなることが考えられる。

 実はこれまで、運動量が少ないことによる長期的な弊害は問題視されていたが、短期的な弊害に関しては、そう大きな問題として捉えられていなかった。しかし、コロナ禍で変わった。

「外出自粛や部活動の制限などで屋内で過ごす時間が増えた。運動量が少なかった子供は、日常的な活動量も減少し、全体的な活動量が一層減っている。結果、子供の肥満が増えているのです」

 アメリカの研究だが、米疾病対策センターが43万2302人の子供について、昨年3月から11月までのBMI(肥満度を示す体格指数)の変化をコロナ前と比較したところ、低体重を除くすべてのグループでBMIの上昇率が拡大。特に、年齢の低い未就学児や学童のグループ、肥満と判定されるグループで上昇が目立ち、肥満グループの上昇率はコロナ前の5・3倍だった。

 国内の調査でも、5~14歳のすべての年齢で、2020年は前年より肥満傾向が高まっていた。

■運動が嫌いな子供ほどスマホ画面を見ている時間が長い

 運動量・活動量の減少が招くのは、肥満だけではない。視力低下やゲーム障害のリスクも高める。ゲーム障害とは、他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先する疾患で、2018年、世界保健機関(WHO)で正式に疾患として認められている。小学生なら1~2カ月でもゲーム障害になる可能性があるという専門家の指摘もあり、またゲーム障害は不眠・睡眠障害、肺活量の低下、視力低下、イライラ・衝動性の増加などを引き起こすといわれている。

「運動時間とスマホなどの画面を見る時間を調べたスポーツ庁の調査では、男子・女子ともに運動やスポーツが好きな子供ほど画面を見ている時間が少なく、逆に嫌いな子供ほど画面を見ている時間が長いとの結果が出ています」

 小・中学生とも「嫌い」と答えた男子の約3割、女子の約2割が5時間以上画面を見ていた。

 また、1週間の総運動時間と朝食摂取との比較では、「0分」の子供は男子・女子ともに、また小・中学生ともに、「毎日食べる」「食べない日もある」「食べない日が多い」「食べない」の中で、「食べない」が最も多かった。

「この状況がコロナ後も続くようなら、生活習慣病のリスクは、短期的に見ても高くなる。早い段階で親が率先して手を打つべきです」

 親が思っている以上に、活動量低下の弊害は大きいと認識すべきだ。

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