認知症を予防する補聴器のすべて

補聴器の調整には数値の客観的評価と「専属トレーナー」が必須

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 かつてこんなお客さまがいました。

 その方はある企業の重役をされている70歳の男性。以前に百貨店で補聴器を購入したもののうまく聞こえず、そのうちに紛失してしまい、2年ぐらいして、やはり仕事で不便を感じ当店に来店されました。

 来店された当初は「補聴器のことはまったく信用していない」「田中さんのところでダメだったらもう補聴器あきらめる」と言われて、重責を感じながら調整をしました。

 それからは補聴器に慣れるまで毎日のようにやりとりをして、週1回の来店時には数値を測定し、「うるさいという感想があるけれども、数値としては上がっているから、もう少しがんばりましょう」というような話をしたり、また理解を深めていただくために補聴器の論文を紹介したりして、出てきた疑問や課題をひとつずつクリアしていきました。

 最終的には、「補聴器はなくてはならないものになった。娘と車でドライブに出掛けたときに今までなら会話ができないとあきらめていたのに、普通に会話ができて驚いた」と、最初の疑心暗鬼な態度とはうって変わって穏やかな笑顔で話していただけるようになりました。

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田中智子

田中智子

シーメンスの補聴器部門でマーケティングの勤務を経て、2020年補聴器販売会社「うぐいすヘルスケア株式会社」設立。認定補聴器技能者資格保持。

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