最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

余命1カ月で退院 やりたいことをやり切り充実した半年を過ごした

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 在宅医療は患者さんの生活をまるごと面倒見る医療だと、これまでお伝えしてきました。そのために日頃から私たちスタッフは、患者さんやご家族の思いに寄り添い、コミュニケーションを取るように努めています。

 患者さんやご家族が何を望んでいるのか、そしてその思いに私たちがどこまで応えられるのか。そのことはとりもなおさず在宅医療の持つ可能性そのものを表しているのだと考えています。

 あれはまだ、当院が開院して間もない頃のことです。69歳の急性白血病終末期の男性の在宅医療をサポートすることになりました。

 その方は神職に就いており、娘さんが宮司を継承したばかり。父として引き継ぎを早くしてあげたい、特に忙しくなる年末年始は自宅に帰りたいという思いがありました。

 一方で、これまで境内の掃除に始まり、行事の執り行いを一つ一つ真摯にひとりで奉職されてきたこともあり、余命を告げられた現実を素直に受け入れられず、戸惑いながら、神社の将来のこと、ご家族のことなどに不安を募らせ、感情的になりやすく情緒も不安定になりがちでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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