新型コロナウイルス感染症は、糖尿病や肥満の方で重症化しやすいことが知られています。一方で糖尿病や肥満の原因は生活習慣によるところが大きく、とりわけ食事の影響は軽視できません。そんな中、英国消化器病学会誌の2021年11月号に、食事の質と新型コロナウイルス感染症の関連性を検討した論文が掲載されました。
この研究では、新型コロナウイルスの感染状況や症状について、スマートフォンでデータを収集した59万2571人が対象となっています。食事の質は食材ごとの摂取頻度によって点数化し、果物や野菜などの植物性食品を多く摂取した場合に高得点となる手法で評価されました。参加者は食事の質が低い(植物性食品の摂取が少ない)集団、中等度の集団、高い(植物性食品の摂取が多い)集団に分類され、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化との関連性が比較されています。なお、研究結果に影響し得る年齢、性別、喫煙状況、運動習慣などの因子で統計的に補正を行い解析されました。
その結果、新型コロナウイルスの感染リスクは食事の質が低い集団と比較して、高い集団で9%低下しました。重症化のリスクについても同様に、食事の質が低い集団と比較して、高い集団で41%低下しました。
食事の質が高い人では健康への関心が高く、感染対策にも十分に配慮していた可能性があります。したがって、野菜を多く食べることが直接的に感染予防や重症化リスクの軽減をもたらしているわけではないでしょう。効果的な感染予防策がワクチン接種であることに変わりありませんが、論文著者らは「食事の質に注目することは、新型コロナウイルスがもたらす社会的な負荷の軽減にとって重要かもしれない」と結論しています。
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