上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「脂質=油」はわれわれの心臓に大きな影響を与える

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 前回、日本人の心臓に問題を引き起こす最大の要因になっている「高血圧」についてお話ししました。もちろん、心臓トラブルに関係しているのは血圧だけではなく、近年、注目されているのが「脂質=油」です。

 脂質は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は、バターなどの乳製品や肉、ラードといった動物性脂肪、ココナツ油などの熱帯性植物油脂に多く含まれています。一方の不飽和脂肪酸は、構造の違いからさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられ、前者はオリーブオイルや、なたね油(オレイン酸)、後者は植物油(オメガ6系脂肪酸=リノール酸)や青魚(オメガ3系脂肪酸=EPA、DHA)に多く含まれます。

 これらの脂質=脂肪酸が心臓に与える影響について、世界各国でさまざまな研究が報告されています。アメリカ心臓病協会は、「摂取する動物性の飽和脂肪酸を減らし、植物性の多価不飽和脂肪酸を増やすと心血管病の発症や死亡を減らす」として、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えるよう勧告しています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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