こうした脂質と心臓に関する数々の研究結果はもちろん、私のこれまでの経験からみても、中高年が加齢による心臓疾患を予防または回避するために最も重視してコントロールしたほうがいい危険因子はコレステロールだと考えています。
コレステロールは体を正常に保つ働きがある重要な脂質ですが、LDLコレステロールが増えすぎると血管の壁に蓄積して動脈硬化の原因になります。動脈硬化は心臓疾患や脳卒中の大きなリスク因子で、突然死を招く危険がアップします。
日本人のコレステロール値は1980年を過ぎてから急上昇し、2000年ごろから総コレステロールの平均値が欧米の水準以上に高くなっています。もともと、日本人男性はLDLコレステロールが高く、HDLコレステロールが低い傾向にあるため、突然死のリスクが高まっているといえるでしょう。
コレステロール値が急激に上がり始めた時期は、働き盛りを迎えた中高年世代が生まれた時期に当たります。いまは心臓に問題がなくても、心臓疾患の発症が増える75歳に差しかかるタイミングで、LDLコレステロールが心臓にトラブルを引き起こす可能性が高くなるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」