心臓手術の名医が語るコロナ禍の治療最前線

コロナによる受診や手術控えは心臓に何をもたらしているのか

ニューハート・ワタナベ国際病院総長の渡辺剛氏(提供写真)

 実際、3カ月ごとに診ていた患者が新型コロナによる受診控えで半年、1年来院せず、受診したときにはかなり進行していた例が散見されたという。

「僧帽弁閉鎖不全症等で経過を見ていた患者さんは半年で心房細動など不整脈が慢性化し、弁逆流も高度になっていました。早く手術をしていれば不整脈は予防できたのにと悔やまれました」

 心臓は4つの部屋に分かれていて、全身から戻ってきた炭酸ガスを多く含んだ静脈血は右心房、右心室を通じて肺に運ばれる。そこで炭酸ガスを新鮮な酸素と交換し、左心房から左心室へと流れていく。そして、酸素をたっぷり含んだ血液は左心室の強い収縮力により大動脈を介して全身に運ばれる。このとき、血液が逆流しないように各部屋の出口には心臓弁があり、タイミングよく開閉することで血液の流れをスムーズにしている。この弁が正常に機能しなくなる状態が弁膜症だ。

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渡辺剛

渡辺剛

1958年東京生まれ、ニューハート・ワタナベ国際病院総長。日本ロボット外科学会理事長、心臓血管外科医、ロボット外科医、心臓血管外科学者、心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医など。1984年金沢大学医学部卒業、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科留学中に32歳で日本人最年少の心臓移植手術を執刀。1993年日本で始めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)に成功。2000年に41歳で金沢大学外科学第一講座教授、2005年日本人として初めてのロボット心臓手術に成功、東京医科大学心臓外科 教授(兼任)、2011年国際医療福祉大学客員教授、2013年帝京大学客員教授。

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