心臓手術の名医が語るコロナ禍の治療最前線

コロナによる受診や手術控えは心臓に何をもたらしているのか

ニューハート・ワタナベ国際病院総長の渡辺剛氏(提供写真)

「僧帽弁は、左心房と左心室の間にある弁です。弁膜症のひとつである僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁逆流症とも呼ばれ、僧帽弁がうまく閉じなくなることで心臓が収縮するたびに左心室から左心房へと血液が逆流し、心臓に余計な圧がかかったり、肺に血液がたまったりする病気です。強い息切れや呼吸困難、疲れやすさ、不整脈、動悸などの自覚症状が出る場合もありますが、血液の逆流が軽度の場合は自覚症状がなく、その間に症状が進行することがあるのです」

 僧帽弁閉鎖不全症を放っておくと、心房細動を起こす場合がある。心房の筋肉がけいれんしたように細かくふるえ、脈が不規則となる病気で、この病気を発症すると心臓の中で血液が滞留してしまい、血栓(血の塊)ができやすくなる。それが血流に乗って脳まで運ばれ、脳の血管に詰まる脳梗塞を起こすことがある。また、心房細動になると脈拍が毎分120~150回に跳ね上がることがあり、心臓が耐えきれなくなって心不全を起こす場合もある。

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渡辺剛

渡辺剛

1958年東京生まれ、ニューハート・ワタナベ国際病院総長。日本ロボット外科学会理事長、心臓血管外科医、ロボット外科医、心臓血管外科学者、心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医など。1984年金沢大学医学部卒業、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科留学中に32歳で日本人最年少の心臓移植手術を執刀。1993年日本で始めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)に成功。2000年に41歳で金沢大学外科学第一講座教授、2005年日本人として初めてのロボット心臓手術に成功、東京医科大学心臓外科 教授(兼任)、2011年国際医療福祉大学客員教授、2013年帝京大学客員教授。

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