心臓手術の名医が語るコロナ禍の治療最前線

ロボット心臓手術は何が凄い? 体だけでなくフトコロにも優しい

ニューハート・ワタナベ国際病院総長の渡辺剛氏(提供写真)

 ちなみに、ニューハート・ワタナベ国際病院の手術リスクは0.3%で、日本平均よりもはるかに低くなっている。

 心臓の手術というと、かつては胸の中央を肋骨ごと20センチ以上切る正中切開がほとんどだった。その後、肋骨と肋骨の間を10センチほど切開して開胸器で押し広げる低侵襲性心臓手術「MICS」が登場。いまは切開したところから高画質の内視鏡を挿入し、「内視鏡下MICS」がようやく全国でも開始されたが、85%の患者はまだ正中大開胸手術を受けている。

■2センチ未満の穴を3~4カ所開けるだけ

 ニューハート・ワタナベ国際病院では、このMICSをさらに進化させ、手術支援ロボット「ダビンチ」によるロボット心臓手術を行っている。

「ロボット心臓手術は7~8センチ切開するMICSと近いところに直径1センチの小さな穴を3~4カ所空け、そこから鉗子などの手術器具を挿入するだけで手術を終えることができます。そのためこの手術法では、①傷口が小さい、②出血が少ない、③術後の痛みが少ない、④早期退院が可能といったメリットがあります。開胸手術のように肋骨を切らないので、肋骨感染の心配もありません。ですから、働く女性にも人気になっています」

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渡辺剛

渡辺剛

1958年東京生まれ、ニューハート・ワタナベ国際病院総長。日本ロボット外科学会理事長、心臓血管外科医、ロボット外科医、心臓血管外科学者、心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医など。1984年金沢大学医学部卒業、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科留学中に32歳で日本人最年少の心臓移植手術を執刀。1993年日本で始めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)に成功。2000年に41歳で金沢大学外科学第一講座教授、2005年日本人として初めてのロボット心臓手術に成功、東京医科大学心臓外科 教授(兼任)、2011年国際医療福祉大学客員教授、2013年帝京大学客員教授。

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