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疲れでも運動不足でもないのに…「危ない肩こり」の見極め方

整形外科医の森川由基氏
整形外科医の森川由基氏(提供写真)

 肩こりには、主に5つの原因が挙げられます。まずは①「筋肉や関節などに由来する肩こり」です。一般的に長時間のデスクワークや前かがみによるパソコン操作、運動不足といった要因で筋肉に慢性的な負荷がかかり、筋肉が硬くなって出来る索状硬結(こわばり)が、肩こりにつながります。

 次に②「メンタル不調による肩こり」があります。自律神経の乱れによって、首から肩にかけて局所的な血行不良が起こるために、“こわばり”ができます。また、自律神経の乱れは脳を介して、症状の慢性化にも関与します。

 そして、いわゆる「危ない肩こり」といわれるのが、③「脊髄由来の肩こり」、④「心血管系疾患の関連痛として起こる肩こり」、⑤「がんの転移による肩こり」などです。

 脊髄由来の場合、首の神経が圧迫されることによるしびれや筋力低下を伴い、進行すると歩行障害を来します。心筋梗塞や大動脈解離では、心臓や血管のダメージを体表面のダメージであると脳が錯覚してしまうことで、首の神経~肩甲骨付近に放散痛が出現することがあります。首のリンパ節や首や肩の骨にがんが転移した場合は、同部位に強い痛みを感じるだけでなく、リンパ節の腫れを“こり”のように感じることもあります。微熱を伴う場合もあります。特に過去にがんを患った方は意識しておきましょう。

 筋肉の“こり”による症状は動かすことで痛みが増強しますが、危ない肩こりは「安静にしていても痛い」のが特徴です。しびれや筋力低下を伴う場合や、しばらく安静にしたりストレッチをしたりしても症状が軽快せず、日増しに痛みが強くなる場合には、注意が必要です。一度、整形外科に相談してみましょう。

▽森川由基(もりかわ・よしき)帝京大学医学部卒業。富山大学大学院修了。博士(医学)。帝京大学ちば総合医療センター整形外科助手を経て、帝京平成大学健康医療スポーツ学部柔道整復学科講師。森川接骨院顧問。市原在宅診療所、海保病院、鎗田病院整形外科の医師も務める。

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