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自由に使える時間が多ければ幸せなのか 米専門誌で研究報告

写真はイメージ
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 全米を対象とした調査では、米国人の約半数が「自分がやりたいことをするための時間がない」と答えているそうです。時間に追われていると感じている人では、自分が好きなことをする余裕もなく、当然ながら幸福度は低下すると考えられます。

 ただ、時間が有り余っていても退屈を覚えることがありますよね。自由に使える時間の量と幸福度の関連性を検討した研究論文が、米国心理学会誌の電子版に2021年9月9日付で掲載されました。

 この研究では、米国人材マネジメント協会が実施している調査データから1万3639人(平均42.3歳)、そして米国労働省の労働統計局が実施している「時間の使用実態調査」のデータから2万1736人(平均47.9歳)が対象となり、自由時間の量と主観的な幸福度の関連性が検討されました。なお、研究結果に影響し得る性別、年齢、配偶者の有無、雇用形態、学歴などの因子について、統計的に補正して解析をしています。

 その結果、2つのデータのいずれにおいても、自由時間が増えると主観的な幸福度が増加したものの、ある時点を超えると幸福度はそれ以上に増加せず、むしろ低下するという関連性が認められました。「時間の使用実態調査」のデータからは、自由時間が1日に2時間を超えると、主観的な幸福度は横ばいとなり、5時間を超えると低下するという結果が得られています。

 自由時間があまりにも少ないことは、幸福を感じにくい大きな原因なのでしょう。しかし、自由時間の量が多いからといって強い幸福感が得られるわけでもなさそうです。

 論文著者らは「自由時間を生産的な活動に使うことで、幸福度の低下を軽減できるのではないか」と考察しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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