空海が中国から持ち帰ったとされるカリンは10月後半~11月に旬を迎えます。カリンといえばのど飴(あめ)などに用いられることが多く、江戸時代の書物にも、咳(せき)、痰(たん)を治すと書かれています。また、咳止め、痰、ぜんそくに効果があるアミグダバリンという薬用成分を含んでいることから漢方としても活用されています。
最近では男女1048人を対象に1日5粒のカリンエキス配合のど飴を12週間、毎日摂取する群と、しない群で比較したところ、摂取している群のほうが風邪をひきにくいという報告もありました。
のどの痛みは粘膜細胞が傷ついて炎症を起こしていることから引き起こされる症状です。これに有効なのが、細胞を壊す酵素の働きを抑え、菌の繁殖を抑える作用、炎症を抑える作用の両方を持つポリフェノールです。カリンは特にポリフェノールが豊富で、なんとリンゴの25倍もあります。インフルエンザウイルスを抑制する強い効果があることも報告されているのです。
その他にも、ビタミンCやタンニン、クエン酸や食物繊維などの成分を多く含み、肌を守る作用、疲労回復、整腸作用などさまざまな健康効果が期待できます。特に食物繊維はジャムなどにすることでより多く取ることができます。カリンは不溶性の食物繊維が多いので便秘の予防や改善に効果があるほか、体内の有害な物質を吸着し体外に排出するのを助ける働きもあるといわれています。
さまざまな健康効果が高いカリンは、芳香剤やアロマで楽しまれるほど良い香りがするのも特徴です。しかし、実は生で食べることができません。生で食べようとすると歯が折れそうなほど硬く、味も渋いのです。そのため、カリンは加熱したり酒に漬けたりして、加工した後の食品がほとんどなのです。
カリンに含まれるポリフェノールをいつ食べたらよいかは、まだわかっていないことですが、疲労回復を狙いたいときは夜に、紫外線から皮膚を守りたいときには朝というように、目的に応じた食べ方がいいでしょう。旬の今、道の駅などでカリンを見かける機会があったら購入して、カリン酒やジャム、はちみつ漬けにしてみてはいかがでしょうか。
時間栄養学と旬の食材