心臓手術の名医が語るコロナ禍の治療最前線

命に関わる心臓だからこそ予防が大切 肥満を改善し動脈硬化を防ぐ

写真はイメージ(C)PIXTA

 むろん、拍動の回数はいつも同じではない。子供は大人より脈拍数が少し早く、精神的緊張や運動により増える。病気で発熱したときも増え、体温が1度上がるごとに1分間の脈拍が10~20回増えると言われている。

 臨機応変にこれだけ酷使されている心臓や血管は、年齢を重ねるごとに機能が衰え、病気になるのは当然。年齢が上がるにつれて突然死の引き金となる狭心症や心筋梗塞を発症しやすくなる。

 狭心症とは心筋(心臓を動かす筋肉)に血液を送る冠動脈が動脈硬化を起こして狭窄し、心筋が酸素不足に陥る病気のこと。心筋梗塞は冠動脈が閉塞する病気を指す。狭心症と心筋梗塞を合わせて虚血性心疾患というが、平成30年の厚労省患者調査によると、その数は男性が35歳から、女性は30歳から増えている。

「その年代は心臓病を引き起こす8つのリスクが重なりやすいからです。①高コレステロール血症②高血圧③高尿酸血症④糖尿病⑤喫煙⑥肥満⑦ストレス⑧家族歴(心筋梗塞の家系)です。これらはすべて動脈硬化につながります。このうち①~⑦は新型コロナ禍の巣籠り生活でアップしたと考えられます。ここ1年の間に外来でフォローアップしている患者さんの多くは、LDLコレステロール等の悪玉コレステロール値が以上となっていることが見受けられました」

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渡辺剛

渡辺剛

1958年東京生まれ、ニューハート・ワタナベ国際病院総長。日本ロボット外科学会理事長、心臓血管外科医、ロボット外科医、心臓血管外科学者、心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医など。1984年金沢大学医学部卒業、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科留学中に32歳で日本人最年少の心臓移植手術を執刀。1993年日本で始めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)に成功。2000年に41歳で金沢大学外科学第一講座教授、2005年日本人として初めてのロボット心臓手術に成功、東京医科大学心臓外科 教授(兼任)、2011年国際医療福祉大学客員教授、2013年帝京大学客員教授。

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