名医が答える病気と体の悩み

お腹を下したら整腸剤と下痢止めのどちらを飲むべきか?

大腸肛門科の前田孝文氏
大腸肛門科の前田孝文氏(提供写真)

「整腸剤」はビフィズス菌や乳酸菌といった菌の作用によって腸を整え、お腹の調子を整える薬です。薬に含まれる菌の多くは胃酸で死滅すると考えられますが、菌に対して体内で起こる免疫反応や、生きて腸に届いた菌の働きで整腸作用があります。菌の配合は各メーカーによって異なります。下痢、便秘、膨満感に効果が認められるものの、一般的に即効性はありません。

 一方で「下痢止め」は一般的にロートエキスやタンニン酸といった成分が含まれ、腸の動きを抑える作用があります。下痢を起こすウイルスや細菌に吸着したり、お腹の中で発生したガスに結合することで、腸への刺激が収まり腸の動きが抑えられます。ただし細菌やウイルスが感染して起こる腸炎の場合、原因となる細菌やウイルスを体内にとどめてしまうため用いてはいけません。感染症を疑わない下痢(過敏性腸症候群、体質による習慣的な下痢、腸の手術をした患者さんなど)のケースでは下痢止めを用います。

 基本的に下痢は数日で治ってしまうことが多いため、検査をして原因がわかる頃には治っていることが多いです。下痢の治療は対症療法として、失った水分やミネラルを補給するために水やお茶、電解質が含まれたスポーツドリンクを小まめに摂取することが大事です。腸の働きをサポートするために整腸剤を飲むことは回復を早めてくれます。

 整腸剤を飲んでも改善しない場合、菌の種類が体質に合っていない可能性もあります。メーカーを替えてローテーションするのもいいでしょう。

▽前田孝文(まえだ・たかふみ)2001年、京都府立医科大学卒業後、外科学教室入局。自治医科大学付属大宮医療センター外科、南カリフォルニア大学大腸外科リサーチフェロー、自治医科大学付属さいたま医療センター(大宮医療センターからの名称変更)などを経て、南流山内視鏡おなかクリニック院長。日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科:大腸)、医学博士ほか。

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