がんと向き合い生きていく

「全身がん」でも長生きする人がたくさんいるのはなぜか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■骨転移はすぐには命に関わらない場合が多い

 一方、乳がんや肺がんなどの骨転移では、骨を溶かして弱くする溶骨性病変となることが多く、病的骨折が起こりやすくなります。痛みや脊髄圧迫などを起こす可能性があるので、状況によって整形外科的治療、緩和放射線治療が行われます。また、病的骨折や痛みを抑えるために、薬物治療(ビスフォスフォネート製剤、RANKL阻害剤)や放射線療法の効果があることも明らかになっています。

 乳がんだった女優の樹木希林さんは、62歳で右乳房全摘術を受け、70歳で全身がんを告白し、その後も映画などで活躍され75歳で亡くなられました。樹木さんが69歳の時、医師・作家の鎌田實さんとの対談で、「がんがなかったら、私自身がつまらなく生きて、つまらなく死んでいったでしょう。そこそこの人生で終わった」と語っています。つまり、全身がんとはいっても、全身骨に転移しても、すぐには命に関わらないことが多いのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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