新型コロナ第6波前だからこそ口腔ケアはしっかりやりたい 中高年はとくに必要

写真はイメージ
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 1日の感染者が236人(10月25日現在)と急減したからといって安心してはいけない。世界的に見れば感染者が急減した今の日本こそ異常な状況で、ワクチン接種や治療法の改善で死者数は大幅に減少しているものの、医療体制の逼迫に苦しんでいる国は多い。その中には強力な変異株が出現しているエリアもある。コロナウイルスが感染しやすい冬に新たな変異株が暴れ回り、日本もいずれ第6波に襲われる可能性は高い。だからこそ、今は歯の手入れに力を入れたい。自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

 口の中は常に温かく保たれ、唾液という水分があり、定期的に食物が通過するので、細菌が増えやすい環境になっている。そのため、口腔内ケアを怠ると、細菌の固まりである歯垢ができて虫歯や歯周病を発症させるばかりでなく、がんや心臓病、糖尿病などの全身疾患を引き起こしたり、咀嚼機能を低下させたり、老化や認知症を進める可能性がある。

「中には、私は歯磨きをしているから大丈夫という人がいますが、間違いです。歯は日々、微妙に移動しているので、中高年は定期的に歯科医院で歯の手入れをしなければ歯並びが悪くなります。例えば、加齢で歯と歯の隙間が広くなった、出っ歯になったと気づく人は歯磨きが足りないからではありません。歯周病が進み、奥歯がぐらぐらしたり抜けたり、治療途中で放置した歯があると自然と前歯で噛むようになり、その結果、出っ歯になったり、歯と歯の隙間ができたりします。また、虫歯の治療などでかぶせものをしていると周りの天然歯のようにすり減らないためにかみ合わせが悪くなる。ほかにもストレスによる食いしばりが増えることも歯並びが悪くなる原因になります」

 つまり、今まで通り歯磨きをしていても加齢とともに歯並びは変化していくため、磨けない場所が増え、虫歯や歯周病のリスクが高くなる。定期的に歯科医院で歯の手入れをしなければ歯は守れないのだ。

「新型コロナでしばらく通院されなかった患者さんで目立つのは冷水痛です。知覚過敏とも呼ばれ、虫歯や歯周病、歯の磨き過ぎ、歯ぎしりなどで歯の表面を覆うエナメル質や歯の根の表面を覆うセメント質が削れたり欠けたり歯茎が短縮して、内面の象牙質が露出したことでしみる症状です」

 歯ぎしりなどがひどい人の中には、就寝時にマウスピースを装着する人がいるが、1年以上マウスピースの調整をしないことで不定愁訴に見舞われる人もいるという。

「睡眠時間は変わらないのに熟睡感がなく寝不足に感じたり、肩こり、あごの疲労感、側頭筋の緊張による片頭痛などを訴える患者さんが多いように思います」

■唾液は細菌やカビの増殖を抑える

 新型コロナ禍で大人の虫歯も着実に増えている。

「リモート生活でいつでも食べられることが原因のひとつでしょう。それも、口にするのはポテトチップスやチョコなど糖質系が多い。口の中に絶え間なく糖質が入っていれば虫歯になるリスクは当然、高くなります。しかも、その場合は飲み物も一緒に取ります。糖質たっぷりのジュースやコーヒーはもちろん、水やお茶であっても四六時中飲むと唾液が出にくくなり、虫歯リスクが高まります」

 唾液は口の中をうるおすだけでなく、口内の細菌やカビの増殖を抑えるなど口腔内トラブルから守る働きがある。

「具体的には食事や歯垢で酸性に傾いた口腔内を中和したり、歯の表面を再石灰化して修復したり、でんぷんを分解して消化しやすくしたり、粘膜の保護や修復をしたりします。唾液量が減ると中高年はすぐに口臭、虫歯、歯周病の症状として表れます。口腔内のカンジダ菌が増え、口角炎になる人もいます」

 とはいえ、新型コロナ禍前に通っていた職場近くの都心の歯科医院は感染が怖いから自宅近くの医院に変える、というのもいい考えとはいえない。

「長く通った歯科医院は患者さんの生活スタイルを知っていて、歯磨きの癖やどんな口腔内トラブルになりやすいかをわかっています。なのに、歯のケアがより重要な年齢になって主治医を代えるのは得策ではありません」

 たとえば、歯科医院を変えたところ歯石や歯垢の除去は歯科衛生士が担当するようになったというケースも少なくない。

 経験豊富な歯科医師は歯茎の下の歯石や歯垢を掃除してくれるが、入れ替わりが激しい歯科衛生士はリスクの少ない歯茎の上の除去しかしない場合もあるという。

「歯科医院は衛生管理が徹底しており、私が知る限りクラスターが発生したことはありません。変に怖がって歯の治療を避ける方がよほど問題があります。とくに今は感染リスクも低く、受診にはもってこいですので、積極的に歯のケアをしていただきたいと思います」

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