新型コロナワクチン副反応を徹底検証【くも膜下出血】接種後死亡1例目として報告

新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける女性
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける女性(C)共同通信社

 3月2日、新型コロナワクチン接種後の死亡事例1例目が厚労省によって報告された。60代の女性で、基礎疾患及びアレルギー歴はなし。報告者によると、死因はくも膜下出血と推定され、「ワクチン接種との因果関係は評価不能」とのことだった。

 10月22日時点で、厚労省が発表するくも膜下出血の「医療機関からの副反応疑い報告」数は、ファイザー製68件、モデルナ製8件。厚労省は専門家による評価、因果関係の有無の検討の結果、「現時点において、ワクチンを接種した人の方が、接種していない人よりも、起こりやすいということが確認されたとの報告はない」としている。

 複数の企業の産業医を務める「リバランス」代表の池井佑丞医師が言う。

「ワクチン接種が進んでいる海外の事例や治験を見ても、くも膜下出血と新型コロナワクチンとの関連があるとは報告されていません。また、くも膜下出血は40~60代で起こりやすいので、今回の件だけでワクチンとの関連を結論づけることはできないでしょう」

 くも膜下出血は、脳を保護する3層の膜(外側から硬膜、くも膜、軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間の隙間「くも膜下腔」に出血が起こった状態。8割以上が、脳の動脈にできた瘤(脳動脈瘤)の破裂で生じる。脳動脈瘤の原因としては、高血圧、喫煙、多量飲酒、ストレス、遺伝的要因が挙げられるが、詳しく解明されていない部分もある。

「くも膜下出血は非常に死亡率が高く、最初の脳動脈瘤破裂で35%が亡くなり、2回目の破裂で15%が亡くなるといわれています。つまり、50%の死亡率の病気なのです。命が助かったとしても、職場への復帰率は40%以下と低い。ストレスに関しては今の時代、ゼロという人は少ないでしょう。くも膜下出血とワクチンとの関連性は別にして、だれもが発症するリスクを念頭に置いて、予防策と対策を知っておくべきです」(池井医師=以下同)

■高血圧・喫煙・飲酒・ストレスがリスクを高める

 くも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤は、前述の通り、高血圧、喫煙、多量飲酒、ストレス、遺伝的要因が危険因子だ。高血圧の人は、そうでない人と比べ、くも膜下出血による死亡率が3倍ともいわれている。高血圧があるならその治療が必須。日本における高血圧患者は4300万人で、半数近くが未治療者、高血圧と認知していない人が1400万人(全体の3割)にも上ると報告されている。自分の血圧が分からない人は、今すぐ調べるべきだ。

「たかが高血圧、と甘く見ていたら、後悔してもしきれない状況を招く。さらに、危険因子を一つでも持っている人にお勧めしたいのは、脳ドックです。特に、近親者にくも膜下出血を起こした人がいる場合は、ぜひ受けるべき。危険因子がなくても、脳ドックで約5%の人に脳動脈瘤が見つかるとされています。20人に1人の確率ですから、少ない数とはとても言えません」

 脳動脈瘤は、一般的に、約5ミリ前後以上の大きさで手術などが検討される。ただし、部位、形状、年齢、健康状態、近親者に患者がいるかなどで対応が変わるので、未破裂の脳動脈瘤が見つかったら、くも膜下出血の手術件数が多い専門医の診察・経過観察を受けることが重要だ。

 くも膜下出血は、前兆が見られることも。特徴的なものは、「血圧の激しい上昇・下降」「これまで感じたことがないような頭痛」「視力低下や目まい、物が二重に見える」「吐き気や嘔吐」「頭がモヤモヤしたりボーッとしたりする」。しばらくすると治ってしまうケースもあるが、数日後に大きな発作を起こすことは珍しくない。

「実は私の知人もくも膜下出血を起こしたのですが、受診時には症状が進行しており、手術可能な状態になるまで10日以上待つことになりました。のちに聞くと、受診のしばらく前からひどい頭痛があったそうです。前兆があったら『様子見』はせず、症状が消えても、できる限り早く病院を受診すべきです」

 くれぐれも、市販の頭痛薬を規定量以上飲んででもなんとかしよう、とは思わないことだ。

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