感染症別 正しいクスリの使い方

【インフルエンザ】高齢者施設ではワクチン接種で82%の死亡を阻止

写真はイメージ
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 インフルエンザワクチンを接種する季節の真っ最中です。日本における季節性インフルエンザは、例年1~2月に流行のピークを迎えます。ワクチンは効果が表れるまで2週間程度かかるので、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいとされています。

 昨シーズン、インフルエンザはまったくはやりませんでした。新型コロナウイルスの感染対策である手洗いやマスク着用の励行によって、今シーズンも流行が抑えられる可能性はあります。しかし、それでもワクチンは接種すべきと考えます。

 インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。こうした大きな効果を考えると、例年通りに流行することを想定して、やはり接種しておくべきといえるでしょう。

 インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいので、毎年流行に合わせた「株」をWHO(世界保健機関)が推奨しています。その中からA型2株、B型2株、計4株のウイルスに対する混合ワクチンが製造されています。ちなみに今シーズンのワクチンは、A型2株は昨シーズンから変更され、B型2株は昨シーズンと同様のものとなっています。

 また、この時季にはインフルエンザ以外にも肺炎球菌ワクチンなど、他のワクチンを接種される方も多いかもしれません。ワクチンを接種する際の「接種間隔のルール」は昨年一部変更されており、インフルエンザワクチンは一部例外を除き、投与間隔なく他のワクチンと同時接種が可能となりました。

 その例外ですが、新型コロナワクチンがそれに当たります。新型コロナワクチンは他のワクチン接種から前後14日間の間隔をあける必要があるのです。新型コロナワクチンはまだ導入されたばかりのワクチンなので、他のワクチンと同時接種した時の安全性と有効性に関するデータが不足しているためです。

 つまり「危険」というわけではなく、あくまで「データが不十分だから」ということです。将来的に、安全性と有効性が確立されれば、他のワクチンとの同時接種も認められるでしょう。もしかしたら、新型コロナとインフルエンザの混合ワクチンも開発されるかもしれません。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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