病気を近づけない体のメンテナンス

首<下>睡眠中の首の姿勢の正しさは寝返りの良さにあらわれる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 首の姿勢が悪いと「肩こり(首こり)」の原因になる。また、それが慢性化して首の筋肉の緊張により頚神経が圧迫されると、「眼精疲労」「頭痛」「めまい」「耳鳴り」「歯の違和感」などのさまざまな症状が引き起こされる場合もある。

 そのため首の健康を保つには、「首の姿勢をよくすること」が最も大切になる。首の骨は「背骨=体軸」の一部であるので、首姿勢を整えるということは、「体軸」を整えることになる。

 20年前に国内初の「枕外来」を開設した「16号整形外科」(神奈川県相模原市)の山田朱織院長が言う。

「立っているとき、座っているとき、寝ているときも、体軸が整っていれば首や肩への負担は減ります。首や肩への負担が少なくなるということは、体のさまざまな不調が改善する可能性があるのです。そして、体軸を整えるには、体軸を意識する必要があります。それには頭の上にリンゴをのせて、リンゴが落ちない姿勢を意識してください。顎を引いて、頭を起こして、胸を開いて、お尻を出して、お腹を引っ込める。このストーンと一本の体軸が通った姿勢が、体軸が整った理想的な姿勢になります」

 立ち姿勢、座り姿勢、いずれも頭の上のリンゴが落ちないようなイメージで、体軸を意識した姿勢を心がけることは可能だろう。しかし、寝ているときは、どのように体軸を意識すればいいのか。それには「寝返りの打ちやすさ」がポイントになるという。

「寝返りというのは睡眠中、『体軸』を中心にベッドや布団の上を左右に転がる行為のことです。何の抵抗もなく回る寝返りこそ、快適な首姿勢で寝ている証拠であり、体が自ら求めて行っているアクションです。それに対して、寝苦しくて向きを変えるのは、寝姿勢が悪く、体がつらいため、苦しまぎれに行っているアクションと言えます。『寝返り』と『寝苦しくて動く』とは、違うことなのです」

 通常、健康な成人は一晩で平均20回以上の寝返りを打つとされる。

 睡眠中は、体を成長させたり、体内組織を修復させたり、心身の疲労を回復させたり、免疫力を高めたり……といった仕事をしている。スムーズに行うことができる“体にいい寝返り”には、次のような役割があるのだ。

①血液、リンパ液、関節液などの体内循環を促す

②日中の姿勢で歪んだ背骨や、ストレスのかかった筋肉をリセットする

③体温調節を促す

 これらの働きがうまく行われていないと、朝起きたときに「首や肩が痛い」「疲労感」「寝違え」「頭痛」「腰痛」などの症状が出やすいのだ。

 そして、寝返りを阻害する原因のひとつに、枕や寝台(ベッドや布団)が合っていないことが挙げられる。特に枕が合っていないことで首姿勢が悪くなり、いびきや無呼吸が起こる場合があるという。

「私は長年の臨床経験から、睡眠時の寝姿勢を整える上で、最も重要なアイテムが枕だと考えています。首は『体軸』の一部として、胸や腰と比べて非常に不安定な部位であり、その睡眠中の首姿勢を決定するのが枕だからです」

 適切な枕を選ぶとき、最も大切なのは、枕の「高さ」と「硬さ」だという。適正な高さは、その人の体格によって異なる。基本的には、横向きに寝て「額」「鼻」「顎」「胸」の中心ラインが一直線になる高さ。そして、あおむけに寝てのどや首筋に圧迫感がなく、呼吸しやすいこと。首から肩にかけて力が抜けている状態になることが大切になる。

 枕の硬さは、一晩中適切な高さを維持できる適度な硬さが必要になる。低反発ウレタンや、もみ殻など昔からよいとされる素材も、枕の高さや形状の変化という点からはあまり勧められない。

 なかなか適切な枕が見つからないというのであれば、自家製「玄関マット枕」を作るという手もある。作り方はこうだ。

■用意するもの

 玄関マット1枚(新品、毛足の短い裏地のついたタイプ)、タオルケット1枚、バスタオル2~3枚

■作り方

①玄関マットをZ形(ジャバラ)に折る

②折りたたんだ玄関マットの上に、同じ幅に折りたたんだタオルケットをのせる

③高さが足りなければ、その上にバスタオルをのせて調節する

 そして、呼吸はしやすいか、首から肩にかけての力が抜けるかをチェックする。OKなら、さらにひざを立て、胸の前で腕をクロスする。この状態で寝返りを打ってみて、コロコロと左右にスムーズに回れたら適切な高さだという。

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