新型コロナワクチン副反応を徹底検証【血圧上昇】命に関わる脳・心臓疾患につながる危険あり

接種後の血圧上昇には注意が必要
接種後の血圧上昇には注意が必要(代表撮影)

 新型コロナワクチンではさまざまな副反応が報告されている。一般的にそれほど注視されてはいないが、気を付けるべきなのが「血圧上昇」だ。

 血圧は病院で計測した場合、「上(収縮期血圧)120㎜Hg未満/下(拡張期血圧)80㎜Hg未満」が正常の範囲とされる。上140以上または下90以上になると「高血圧症」と診断され、その間の数値は「正常だが高めの血圧」と定義されている。

 血圧が高くなると、心臓が血管に血液を送り込む際に大きな力が必要となり、心臓や血管に負担がかかる。血管の内壁が傷ついて動脈硬化やこぶ(動脈瘤)が出来やすくなる。すると、狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤や大動脈解離などの心臓血管病や、脳卒中といった命の危険もある病気につながってしまう。

 そんな血圧が、新型コロナワクチンの接種後、大幅に上昇するケースが報告されている。ある循環器内科では、血圧をコントロールできていた患者がワクチン接種後、上の血圧が180前後、あるいは下が130程度まで上昇するケースが何人にも見られたという。

「上180以上または下110以上」という数値は「Ⅲ度高血圧」に該当し、放置していると心臓血管や脳血管病で死亡するリスクが正常範囲の人と比べて約10倍になるとのデータがあるだけに、軽く考えるわけにはいかない。

 厚労省が10月22日に公表した「医療機関からの副反応疑い報告状況」によると、2月17日から始まったファイザー社のワクチン接種後(推定接種回数1億4144万2370回)に診療上で「血圧上昇(高血圧)」があった例は91件、「高血圧緊急症」が5件。5月22日から始まったモデルナ社(同2770万1010回)では、血圧上昇が17件、高血圧緊急症が3件となっている。同じく「製造販売業者からの副反応疑い報告状況」では、ファイザーが264件/12件、モデルナが6件/4件だった。また、検査測定レベルでの血圧上昇は、ファイザーで1393件、モデルナで12件見られたという。

 なぜ、ワクチン接種で血圧が大幅に上昇するのか。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏は言う。

「はっきりしたメカニズムはわかっていませんが、mRNAワクチンが体内で作り出すスパイクタンパク質が関係しているのではないかと考えられています。作られたスパイクタンパク質は、細胞の表面にある『ACE2受容体』に強力に反応し、細胞膜でのACE2の発現が低下します。ACE2には、血圧を上昇させる作用を持つ生理活性ペプチド『アンジオテンシンⅡ』を分解する働きがあるので、ACE2の発現低下によってアンジオテンシンⅡが増え、血圧が上昇する可能性が指摘されているのです。ただ、それでも接種直後の急激な上昇は説明できません」

■海外でも同様の報告

 権威ある医学誌「Hypertension」(2021年7月号)でも、スイスでの血圧上昇の症例が報告されている。ファイザー社のワクチン1回目接種1万2349件、2回目接種947件(モデルナ2件)のうち、9人に接種後のⅢ度高血圧が認められた。

「そのうち8人はもともと高血圧症で降圧剤を服薬していました。ワクチン接種後の血圧は、上220~170/下115~88に上昇、2例に頭痛、3例に倦怠感、1例に胸痛が認められ、6例は救急センター受診となっています。スイスでの頻度を考慮すると、日本での血圧上昇は報告数よりかなり多いのではないかと推測されます。ワクチン接種後に頭痛や倦怠感を訴える例が多く報告されていますが、血圧上昇が関わっているかもしれません。また、接種後の死亡報告事例で、虚血性心疾患、心不全、大動脈疾患、脳卒中といった脳・心臓血管病が目立つのは、血圧上昇がトリガーになったケースがある可能性も考えられます」

 因果関係はわからないが、ワクチン接種後は血圧が大幅に上昇するリスクがあると認識し、接種後は血圧をきちんと把握することが身を守るためには大切だ。

「自覚はなくても血圧が高めの人はたくさんいます。降圧剤を服用している人はもちろん、そうでない人も、ワクチン接種後は朝晩2回、血圧を測ることを勧めます。ワクチンによってスパイクタンパク質が作られているのは1週間前後までといわれていますから、その期間はより注意したほうがいいでしょう。血圧が急上昇している場合は、すぐに医療機関を受診してください」

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