がんと向き合い生きていく

胃がんの妻を支えていた旦那さんに思いも寄らない出来事が…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Oさんが点滴のベッドに横になると、旦那さんは小さな椅子をベッドのそばに運び、座って見守ります。私が点滴の注射を刺すと、旦那さんはニコッと笑顔で「ありがとうございます」と言われるのが、いつものことでした。

 抗がん剤の点滴治療は約1時間半かかり、週1回のペースで3週続け、その後、2週休みのスケジュールでした。次第に腹水は減り、それなりに効いていました。

 Oさんは「お腹が楽になった」と喜んでいましたが、それほど元気ではありません。食事をたくさん食べられているわけではなかった上、腸の動きが悪く、緩下剤を使っても便通が大変なようでした。

■病名を聞いて二度びっくり

 こうした治療が4カ月続いたある日、診察にいらしたOさんは、旦那さんと一緒ではありませんでした。付いてこられた姪の方と診察室に入ってくるなり、「夫が亡くなった」と言うのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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