Oさんが点滴のベッドに横になると、旦那さんは小さな椅子をベッドのそばに運び、座って見守ります。私が点滴の注射を刺すと、旦那さんはニコッと笑顔で「ありがとうございます」と言われるのが、いつものことでした。
抗がん剤の点滴治療は約1時間半かかり、週1回のペースで3週続け、その後、2週休みのスケジュールでした。次第に腹水は減り、それなりに効いていました。
Oさんは「お腹が楽になった」と喜んでいましたが、それほど元気ではありません。食事をたくさん食べられているわけではなかった上、腸の動きが悪く、緩下剤を使っても便通が大変なようでした。
■病名を聞いて二度びっくり
こうした治療が4カ月続いたある日、診察にいらしたOさんは、旦那さんと一緒ではありませんでした。付いてこられた姪の方と診察室に入ってくるなり、「夫が亡くなった」と言うのです。
がんと向き合い生きていく