その頃から、Oさんの腹水は増えるようになりました。抗がん剤が効かなくなったのだと思います。1週間後、Oさんはほとんど食べられなくなって入院しました。両下肢は浮腫で象のように太くなり、尿はほとんど出ません。そして、数日で亡くなりました。
ある看護師さんが「仲のいい夫婦なんだね。後を追うように亡くなるなんて」と漏らしました。それを聞いた私は急に腹が立って、「冗談じゃないよ。かわいそうじゃないか! バカヤロー」と心の中で叫びました。
Oさんが亡くなって数日が過ぎ、診察の時に旦那さんが座っていた椅子を見ていると、車いすに乗って上目遣いに私を見るOさんと、車いすを押しながらニッコリほほ笑む旦那さんの姿が脳裏に浮かびました。
やはり、仲のいいご夫婦だったのだ、と思い直しました。
がんと向き合い生きていく