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バイデン政権の民間労働者へのワクチン義務づけを裁判所が差し止め

ワクチン接種を行う会場の外で抗議活動を行う人たち
ワクチン接種を行う会場の外で抗議活動を行う人たち(C)ロイター

 バイデン政権が全米の約1億人の民間労働者に対し、来年1月4日までにワクチン接種する義務を課すと発表したのに対し、連邦高裁が一時的に差し止めを行いました。政治と司法を巻き込んだアメリカのワクチン戦争はエスカレートの一途をたどっています。

 バイデン政権が民間にもワクチンを義務付けたい最大の理由は、59%と低迷するワクチン接種率と、感染者1日7万人という高止まりの感染状況にあります。特にワクチン未接種者が重症化して死亡する確率は接種者の40倍という数字もある中、次の感染の波が来た場合、「未接種者のパンデミック」になるだろうという声もあるほどです。

 そこで、今回の義務付け案は連邦職員に加えて民間企業や医療関係者にも広げようというもの。社員100人以上の企業では会社の責任で接種を行い、しない人には最低週1回の検査が課せられ、社員の接種には有給休暇を与えることも義務付けられます。医療関係者に対しては検査というオプションはなく、全面的な接種が必要となります。

 アメリカではこれまでに多くの州や市町村単位で、また企業でも独自のワクチン義務付けが始まっていますが、企業や医療機関によっては、最高96%という高い接種率を達成したという報告もあり、全米平均を大きく上回る成功が注目されています。

 一方、ニューヨーク市では今月1日が警察や消防など市職員のワクチン義務化のデッドラインでしたが、駆け込み接種で最低でも1回接種した職員は全体の93%に達しました。

 しかし「ワクチン義務化は人権侵害」というアメリカ人は特に保守共和党支持者に多く、それが保守12州でのワクチン義務付けを禁止する州法につながっています。

 今回義務化を差し止めた連邦高裁判事も保守派だったため、民主党バイデン政権に対する政治的な意図があったのではという批判も絶えません。次は最高裁でその是非が争われるわけですが、保守判事が圧倒的多数の最高裁での裁定はバイデン政権にとって分が悪いのではという見方も出ています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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