科学が証明!ストレス解消法

仲が悪い夫婦ほど発言中に相手に向ける視線量が多い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 芸能人や有名人の謝罪会見などを見ていると、いかに目が口ほどに物を言うかが分かります。やたらとまばたきが多い人、明らかに動揺している人は、視線の動き(視線行動)が特徴的だと思います。クリントン元大統領は、不倫疑惑の釈明会見で、1分間に100回以上もまばたきをしていたという話もあるほど。

 あまり知られていませんが、霊長類で白目(強膜)を持つのは人間だけです。チンパンジーなどは強膜こそありますが、茶色なので判然としていません。動物の世界では、視線行動が読み取られると、どちらに逃げるかが敵にバレてしまうため、白目が発達しなかったと考えられています。

 しかし、人類の知能で、動物のような原始的な回路を持つ必要がなくなりました。その一方で、黒目の動きが強調されてしまう白目を備えてしまったことは、なんとも皮肉的ですが。

 とはいえ、アイコンタクトをはじめ、白目を持つ人間だからこそ可能なコミュニケーションがあることも事実です。

 たとえば、恐怖や驚きを感じると目を見張りますし、怒ると目をむきます。こういう激しい感情を経験するときには、まぶたも瞳孔も開いています。こういった観察に関する研究は、進化論で有名なダーウィンによってもなされているほどです。

 また、科学技術振興機構の柏原らの研究(2010年)では、「心の動きは自分の意思ではコントロールできない目の動きに表れることもある」と報告されています。まさに、目は口ほどに物を言うのです。

 仮に目の動きを意識的に止めていても、マイクロサッケードと呼ばれる小刻みな動きを無意識に眼球は行っています。先の研究によれば、快感や不快感を呼び起こす心の動きは、マイクロサッケードを抑える傾向があるとも唱えています。

 そして、次のような怖いお話も。ユタ大学のベイヤーと医師のスターンバーグの研究(1977年)によれば、「適応度の低い夫婦ほど、発言中に相手(配偶者)に向ける視線量が多い」と報告しています。夫婦関係があまり良くないから改善の意を込めて真摯に目を見ているのではありません。なんと、理解し合うという意思ではなく、自分の発言が相手にどういう効果をもたらしているかを、話しながら相手を見て、常に監視、支配しようとする動機の表れである、と彼らは説明しているのです。

 しかも実験では、配偶者が否定的なメッセージを発した場合に、特に直視量が多くなったといいます。視線に敵対的な意味が込められ、「なんか文句あるのか? 言ってみろよ」といった敵愾心の視線だというわけです。言われてみれば、ケンカをしている人って、なぜか異様に相手の目を見つめますよね。対して、適応度の高い夫婦の場合は、夫は発言中よりも聴取中に妻に多くの視線を向け、敵意や監視の意がないと示唆していることも分かりました。いやはや、まさしく目は口ほど……、いや口以上に物語っているのです。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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