名医が答える病気と体の悩み

深刻な病気が隠れている「腰痛」の見極め方は?

整形外科医の神田良介氏
整形外科医の神田良介氏(提供写真)

 一般的な腰痛は、同時に足がしびれたり、足に力が入らないといった症状が出るケースが多く見られます。腰の神経は足に向かって通っているためです。しかし、腰の痛みと合併した足以外の違和感を覚えたら、重病が隠れている可能性があります。

 主に5つの病気が考えられます。1つ目は「内臓疾患」です。胃腸、十二指腸、胆のう、すい臓といった消化器の炎症が原因の場合、腰痛と腹痛を併発します。吐き気や嘔吐が伴うこともあります。2つ目に「泌尿器系の疾患」です。腰痛と同時に排便・排尿のコントロールができなくなったり、血尿が伴うと前立腺がんや腎炎といった疾患が疑われます。3つ目は「婦人科系の疾患」で、腰痛とともに強い生理痛や不正出血があると子宮内膜症、子宮がん、卵巣がんが考えられます。

 これらの場合で、長引く腰痛や刺すような激しい痛み、いきなりドンと痛くなる症状があれば、肺がんや前立腺がん、大腸がんといったがんが進行し、脊椎・脊髄に転移している可能性があります。

 4つ目が「循環器系の疾患」です。大動脈瘤や大動脈解離の前兆は、腰痛と間違えやすい。最後は「心因性の腰痛」です。脳の抑制反射によるもので、仕事や学校のストレスやうつ病患者の方に多く発症しています。1日40~50人の患者さんを診ていますが、半数近くが心因性です。薬を出しても効かない、診察しても原因がはっきりしない方は心因性の可能性が高いといえます。

「いつもの痛み止めでは効かない」「なかなか腰痛が治らない」という場合、痛みが2週間続くようなら病院にかかりましょう。その際に「腰が痛いだけか」「足のしびれはあるか」「排便・排尿はスムーズか」「痛みの程度」についての症状をメモを取っておくと参考になります。また、科を横断して複合的に診断しやすい総合病院(総合診療科)を訪ねてみてもいいでしょう。

▽神田良介(かんだ・りょうすけ) 帝京大学医学部卒。1989年帝京大学溝口病院整形外科、92年一心病院整形外科医長、96年帝京大学リハビリ科助教、98年から北千束整形外科院長を務める。近著に「腰痛がたちまち消える3秒ストレッチ」(アチーブメント出版)。

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