排泄はわれわれにとって欠かせない行為です。「寝る」「食べる」「排泄する」の3つは、意識がある間は必ず付いて回ります。ですから、たとえば手術を受けてこれらが制限された状態から、自力でできるようになると、患者さんは「回復した」と強く実感します。
また排泄は、入院時に尿道カテーテルやおむつなどで人工的に“作っている”時間が長くなればなるほど、患者さんが日常生活に戻るまでの期間を長くしてしまいます。いわゆる「廃用症候群」と呼ばれる状態を招いてしまうのです。そのため、入院患者さんに尿道カテーテルやおむつなどを実施している場合は、できるだけ早期に離脱できるように管理しています。排泄に関して「自律した」という実感が、体の回復にとって重要なのです。
患者さんにとっては、自力で排泄をコントロールできるという状態が、最もストレスが少ないといえます。その状態を少しでも早く取り戻してもらうため、医療者側は力を注ぐ必要があります。どうしても排泄を人工的に作らなければならない状況でないのであれば、患者さんが苦痛を感じないレベルでの訓練やリハビリなど、患者さんと一緒に少しでも早く人工的な排泄から離脱する作業を行うことが大切です。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」