科学が証明!ストレス解消法

「バカ」「ちくしょう」と粗暴な単語を使う人ほど正直で誠実

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ようやく仕事で一息ついて、お昼ご飯を食べに行ける。ところが、入った飲食店のスタッフの手際が悪く、なかなか料理が出てこない。ゆっくり時間を過ごしてストレスを緩和させるつもりが、かえって台無しになってストレスがたまってしまう。そして、思わず口汚い言葉を並べてしまう。

 頭では言わない方がいいとわかっている言葉でさえも、人間は時として放言してしまいます。悪態をついたところで、何かが解決するわけではない、そしてまた自己嫌悪に陥る--。日頃から悪態をついたり、暴言を吐く癖のある人からすれば「は~、また余計な一言を口にしてしまった」と頭を抱えているかもしれません。

 しかし、興味深い調査があります。マーストリヒト大学のフェルドマンらが、フェイスブックなどを介してアメリカ全土で行った大規模な調査(2017年)の結果、「野卑で粗暴な単語を使う人ほど、実は正直で誠実な傾向がある」ことがわかったというのです。

 実験は、50を超えるフェイスブック上のステータス更新情報を持ち、30人を超える友人がいる7万人超の参加者を対象に行いました。

 すでに開発されている誠実さや正直さを測るソフトウエアをもとに、参加者のフェイスブック上の行動を分析し、その上でソフトが、罵詈雑言や口汚い言葉、誠実な言葉といった言語学的検出を行う。そして、参加者の冒涜率とステータス更新における正直さの関係を調べたそうです。たとえば、ソフトが「バカ」とか「ちくしょう」といった言葉を検知し、その上でステータス更新時の「いいね」など好意的な態度や誠実な言葉がどれだけあるかといったことを照合するのです。

 また、アマゾンのサービスを使った調査では被験者に、よく口にする汚い言葉を挙げてもらい、「対面時」「独り言」「文章において」などシチュエーション別に頻度を尋ねました。その上で、「これまでに嘘をあまりついたことがない」など意地悪な質問を織り交ぜた誠実度を測るテストを行ったといいます。たしかに、その設問に「はい」と言える人は、嘘をつく傾向が高いと考えられますから、よくできています。

 これらの調査の結果、より多くの汚い言葉を使っている人たちが、実生活では正直であると示されたのです。口は汚いかもしれない。しかし、思ったことをそのまま言うからこそ誠実でもある。そう考えると、過度に自己嫌悪に陥る必要などないのです。

 ただし、東フィンランド大学のトルパネンらの研究(2014年)によれば、「普段から他人を貶めたり、批判するような言葉を発したりすると、認知症のリスクが3倍も高くなる」ことが示唆されています。これは高齢者を対象にした実験ですが、若い時分から罵り言葉が当たり前になると癖になり、リスクは高まります。

 冷笑はよくないですが、誠実さに裏付けされているキツい言葉は、一概に“暴言”とは言い切れない。もし、あなたが我慢できずに粗暴な単語を発しても、過度に自己嫌悪に陥らないようにしてください。それは時に誠実の裏返しでもあると考えましょう。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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