「東のアンコウ、西のフグ」といわれるほど珍味として重宝されているアンコウ。江戸時代には水戸藩から将軍家へ献上されたこともあり、東の代表格の魚でしたが、現在は全国で食べられる魚で、アンコウ鍋は冬の風物詩です。
英語では「anglerfish」(釣りをする魚)とも呼ばれ、主としてプランクトンや小魚を食べます。種類によっては小さなサメ、スルメイカ、カニ、ウニなども食べ、まれに水面に出てカモメやペンギンなどの海鳥を襲うこともあるそうです。
そんなアンコウは「背骨以外、食べられないところはない」といわれ、キモ、身、エラ、皮、トモ(ひれ)、ヌノ(卵巣)、水袋(胃)を「7つ道具」と呼び、さまざまな味覚を楽しむことができるのです。
では、栄養価はどうでしょうか。アンコウの身は軟らかく、水分が約85%含まれるため、100グラム当たり58キロカロリーと低カロリーで良質のタンパク質を含みます。脂質と炭水化物は0.2~0.3グラムと、ほぼ含まれていません。
一方、キモは脂質が多く、100グラム当たり445キロカロリーとエネルギーは高め。しかし、それだけにかなりの栄養素が含まれるのです。
特に一緒に取ることで作用を高め合うとされる「ビタミンACE(エース)」は全食品の中でもトップクラスの含有量です。目の健康や免疫力の向上に関わるビタミンAの含有量は、豊富といわれる養殖ウナギの3.5倍。強い抗酸化作用のあるビタミンEと一緒に取ることで、その抗酸化力が増し、悪玉コレステロールの酸化防止に強く働きかけて、アンチエイジングに役立つことも分かっています。
ほかにも、多く含まれているビタミンB12には精神を安定させる作用もありますし、ビタミンDは骨粗しょう症の予防、セレンの抗酸化作用はビタミンEの500倍といわれるほど。アンコウはそれらの作用を高めながら、一気に摂取できるうれしい食材なのです。
さらに、脂質中には動脈硬化などを予防するEPAやDHAも多く含まれます。ひれや皮には紫外線保護作用を持つと考えられるコラーゲンが豊富で、皮膚の保護作用も報告されています。
このように、アンコウには栄養価が高い成分があまりに多いため、ピンポイントで「いつ食べるべきか」についてお話しすることができません。食べ過ぎに注意しつつ、目的に応じて楽しんでみるのがいいでしょう。
時間栄養学と旬の食材