コロナワクチン接種で「不正出血」が起こる? 専門家に聞いた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「新型コロナワクチン接種後、不正出血があった」という内容の投稿がSNSで相次いでいる。ワクチンと不正出血は関係があるのか?

 東京都在住の50代前半の女性は、閉経はまだ迎えていないが、生理の量はかなり減っていた。しかしワクチン(ファイザー製)1回目接種の2日後、大量の不正出血が5日続いた。2回目の接種後は不正出血がなかった。淀川キリスト教病院(大阪市)産婦人科の柴田綾子医長が言う。

「当院でも、患者さんから『ワクチン接種後に生理の出血量が増えた』『閉経していたのに不正出血が出た』といった話を聞いています。感覚として30人に1人くらいの印象でしょうか」

 イギリス、アメリカ、韓国では、ワクチンと不正出血の関係について研究が始まっているが、現時点では関係は不明。日本の厚労省は「直接的に不正出血や月経不順を引き起こすことはない」とホームページに掲載している。

「ワクチン接種後、発熱や体調不良が起こることは報告されており、これらの体の変化やストレスで不正出血が起こっていることも考えられます」(柴田医長=以下同)

 ほとんどの不正出血は、1カ月ほどで自然に治る。また、ワクチンの成分は卵巣に蓄積することはなく、不正出血や月経異常で不妊症のリスクは上がらない。だから、「関係が不明」の現時点で、ワクチン接種後の不正出血を過度に心配する必要はない。ただし、ワクチン接種後、次のようなことがあったら注意だ。

【不正出血の量が多い】

「生理2日目のような出血量が2、3日続いている場合や、レバーのような血の塊が何個も出る場合は、貧血を起こしてしまうかもしれないので、近くの婦人科や内科を受診してください」

【生理が止まった】

 生理が3カ月間以上来なくなったら、婦人科で女性ホルモンの状態や卵巣の状態を確認すべき。

「過度なダイエットやストレス、運動のしすぎが関係しているかもしれません」

【不正出血を何度も起こしている】

「ワクチンとは関係なく、病気が隠れている疑いがあります」

 不正出血を起こす病気は複数ある。子宮頚がん、子宮体がん、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、甲状腺機能異常、女性ホルモン異常、排卵障害などだ。

「子宮頚がん検診をこの2年受けていないようなら、不正出血が1度だけでも、1カ月以内に治っても、念のために検診を受けることを強くお勧めします」

 20代でも、閉経していても、子宮頚がんワクチンを過去に打っている人も、同様だ。実際、子宮頚がんは、不正出血がきっかけで発見されることが結構ある。子宮頚がんは30~50代の女性に多いがんで、性行為の回数が多い人、性行為のパートナーが多い人、喫煙者でリスクが高まるが、基本的には子宮があり、性行為の経験があるなら、誰でも発症する可能性がある。

 12歳以上のワクチン接種も始まっている。思春期で不正出血があった場合は、どうすればいい?

「思春期は女性ホルモンのバランスが崩れやすく、もともと不正出血が起こりやすい。出血量が多かったり、1週間以上続くなら婦人科に相談してください」

 内診を不安に思う人がいるかもしれない。病院によるが、思春期の女子には内診以外の検査を優先しているところもある。問診票に「内診は極力避けたい」と記入しておく手もある。

 なお、厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)への医療機関からの副反応疑い報告(今月3日時点)は、最も接種者数が多いファイザー製で性器出血(子宮出血)2件、重度月経出血3件、性器出血(性器出血)9件。女性の推定接種者数約8900万回中なので、割合としては非常に少ない。

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