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がん検査「CT」「MRI」「PET」はそれぞれわかることが違う

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「がんの検査で、CT、MRI、PETはどう違うのですか?」

 先日、患者さんからこんな質問がありました。今回はこれらの検査について簡単に説明します。

 CT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像)、PET(ポジトロン断層撮影)検査は、がんだけではなく、体の病変を画像で診断するものです。

 CT検査は体の断面を撮影し、複数の写真をコンピューターで処理して画像にするものです。新型コロナ感染症においては、肺炎の有無を診断するのに有用です。がん診断では最も基本的な画像診断です。体を横断した像で、がんの存在、転移の有無、ステージの確定、再発の有無、治療効果判定において不可欠な検査といえます。

 CT画像は、腫瘤の存在や大きさなど、客観的な画像が得られます。軟部組織など正常臓器との区別には造影剤の投与が必要で、造影剤投与による反復撮影(ダイナミックCT)、つまり造影前・造影中(動脈相、門脈相など)・造影後の画像により、血行動態から病変の質的診断に役立ちます。

 最近のCTでは頚部から骨盤まで10秒ほどで撮影でき、体幹部の横断とそれに直行する縦断(冠状断、矢状断)などで画像を再構築できるため、立体的な3次元像が得られ、正常臓器との位置関係が分かりやすくなっています。

 MRI検査は、体の細胞に含まれる水素原子を磁力と電波によって揺さぶり、原子の状態を画像化したものです。軟部組織のコントラスト分解能が高いので、CTではコントラストがつきにくかった脳、肝臓、子宮、骨軟部の腫瘍の診断に有用性が高く、特に骨、神経、血管、靱帯、椎間板、半月板を映すことも可能です。しかし動くもの、心臓や腸管は像がぶれてしまうためできません。

 MRCP(MR胆管膵管撮影)は、MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査です。胆管がん、胆嚢がん、膵臓がんをはじめ、ほかに膵嚢胞性疾患、胆管や膵管などの解剖学的異常、胆石、総胆管結石の診断に役立ちます。

 このMRI装置の高性能化により、全身を一度に検査できるようになったものが「ドゥイブス(DWIBS)撮影」と呼ばれています。

■組み合わせて診断する場合も

 PETは、がん細胞が正常細胞より糖代謝が高進していてたくさんのブドウ糖を必要とすることを利用した検査法です。FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)という検査薬を注射し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像にします。がんの箇所にFDGが強く集積するので、正常組織との“違い”がコントラストよく描出されるのです。

 ただし、糖尿病などで高血糖の状態では正確な結果が得られないことがあります。また、がんではなくても、ブドウ糖が集まりやすい脳、心臓、消化管、腎盂、尿管、膀胱など、また炎症を起こしている部位では、がんの診断が困難です。

 PET/CT検査はPET検査とCT検査の画像を重ねてがんの位置を診断します。PETでFDGが集積した位置が、解剖学的にどこなのかをCT画像で明らかにするのです。

 全身MRIやPET検査は一度に全身の検査ができますが、いずれの検査でも消化管の診断は苦手です。食道や胃については胃内視鏡あるいは胃X線検査、大腸では便潜血反応で陽性であれば、大腸内視鏡検査が必要です。

 CT検査とPET検査では放射線を使いますから、「被曝」が気になります。CT検査の放射線量は1.4~3.5ミリシーベルト、PET検査で使う検査薬のFDGから放出される放射線量は3.5ミリシーベルトです。FDGから出る放射線は時間とともに減り、尿から排泄されます。

 人の健康に影響するのは、通常100ミリシーベルト以上だといわれていますし、日本人は通常の生活でも年間平均1.2ミリシーベルトの放射線を受けているといわれています。検査での被曝量はそこまで心配する必要はないでしょう。しかし、妊娠している、あるいは妊娠している可能性がある方は、必ず医師と相談してください。胎児は放射線の影響を受けやすいためです。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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