医者も知らない医学の新常識

体重を減らすだけで糖尿病は「治る」のか? 臨床研究報告

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 糖尿病は治らない病気と言われてきました。たしかに糖尿病が完全に治ることは、難しいと言っていいと思います。ただ、「治る」という表現にも結構幅があるものです。

 糖尿病の患者さんが、薬などの治療を中止しても正常と呼ばれる血糖値になり、それが継続されるという状態は、それほどまれではないことが最近分かってきました。この「ほぼ治った」と言っていい状態のことを、医学用語では「寛解」と呼んでいます。寛解は完全に治った状態とは違うので、油断して生活が乱れると、再び糖尿病になることがあります。そのため経過観察は必要なのですが、良い時の状態としては「治った」というのと同じなのです。

 それでは、どうすれば糖尿病は寛解するのでしょうか? 体重が増えることで糖尿病を発症した人は、体重を元に戻すことで寛解する可能性が高いことが、専門家の間でも話題になっています。今年、学会で発表されたイギリスで進行中の臨床研究によると、肥満を伴う糖尿病の患者さんに、短期間の減量治療を行ったところ、なんと約3分の2の患者さんの糖尿病が寛解したのです。

 これはまた別の研究ですが、適切に体重を落とすことにより、血糖を下げるインスリンというホルモンの反応も、正常になったという報告もあります。すべての糖尿病に当てはまる話ではありませんが、一部の糖尿病が寛解することは、科学的事実であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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