みなさんは、在宅医療に対してどんな不安をお持ちでしょうか? 急変時対応はどうなっているのか? 在宅医療を始めると、ほかの病院のサポートを受けられなくなるのか?──ただ漠然と、「自分には在宅医療は無理だろう」と諦めモードの方もいるかもしれません。
これまでにもこのコラムでお知らせしてきたように、在宅医療向けのサービスや制度は、病院に入院して受ける医療サービスとなんら遜色がありません。
急変時に後方支援として病院へ入院する必要が生じた場合は、問題なくできます。患者さんが在宅医療を利用しているからという理由で、入院や治療ができなくなるといったことはないのです。診療所と連携している病院でベッドの確保をしてくれることも珍しくありません。
患者さんによっては、自分が在宅医療を選択することで、一緒に暮らす家族へ負担がかかるのでは……と心配する方もいます。この解決方法としては、家族にまず「在宅医療」を理解してもらうことが重要であると思っています。
ある患者さんは、「同居する子どもに迷惑をかけたくないから、在宅医療になかなか踏み切れなかった」とお話しされていました。この方の場合、お子さんが在宅医療についていろいろ調べ、理解した上で、「自宅で療養したいと思っているんじゃない?」と提案し、在宅医療がスタート。このように、家族の側から患者さんに「大丈夫だよ」「甘えていいよ」という雰囲気をつくることは大切です。
在宅医療には、医師だけでなく訪問看護師、訪問ヘルパーといったさまざまな人の手が入ります。リハビリや入浴も訪問してもらえますし、自宅をバリアフリーにする費用の補助、ベッドや車イスのレンタルサービスなど各種サービスの用意もあります。
そのために、思ったほどご家族の負担が多いということもなく、生活を送れます。実際、いざ在宅医療を始めてみると、最初に思っていた不安が杞憂だったとみなさん口にします。
私たちの患者さんの中には、そもそも見守ったり世話を焼いてくれたりするご家族のいない独居の高齢者もいますが、そんな患者さんでも、在宅医療が成立しているのです。
在宅医療に関わるスタッフみんなに共通しているのは、患者さんやご家族が希望するテーラーメードな療養を提供したいということ。
日本の医療は今、超高齢社会を迎え、多様な価値観やニーズに応えるために、入院医療から在宅医療へと徐々にシフトチェンジしようとしています。病院だけでしか医療を受けられないと考えていた方も、選択肢として「在宅医療」を考えてみてはいかがでしょうか。
最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと