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オミクロン株感染対策「入国禁止」は科学的に効果がない? 米国では批判の対象に

人影まばらな成田空港到着ロビー
人影まばらな成田空港到着ロビー(C)日刊ゲンダイ

 世界を震撼させている新型コロナウイルスのオミクロン変異株。巷間で取り沙汰されているほど高い感染力があるのか、ワクチンへの耐性や重症化リスクの高低に関して、今この原稿を書いている12月初めの時点では科学的な分析結果は確認されていません。

 しかし、一刻も早い対策を取りたい各国政府は、より厳しい入国禁止措置に乗り出しました。一方で、こうした水際対策が本当に効果があるのか? 疑問の声も高まっています。

 まず批判の対象になっているのは、アメリカで行われているオミクロン株が最初に確認されたアフリカ諸国に対する入国禁止です。カリフォルニアに続いて確認されたミネソタ州の住人は、ニューヨークでアニメフェスに参加していたことが判明。ニューヨークで感染確認された人のほとんどは市中感染とみられ、すでにアフリカからの入国禁止は遅いということになります。

 そもそもパンデミックがこれほど進み世界中で変異株が発生する今、入国禁止に意味はないという専門家もいるほどです。

 WHO(世界保健機関)は、対象国の感染率や変異株の感染力、ワクチン耐性などを踏まえて判断すべきとしています。しかしこれまでの入国禁止に効果があったかどうかは評価が分かれ、むしろ経済に悪影響を与え、人権侵害にも注意が必要と警告しています。それでも政府が入国禁止に踏み切るのは、少しでも国民の安心を買う時間稼ぎのためとも考えられています。

 すべての外国人を再びシャットアウトした日本に対しては、空港での検査から14日間の隔離まで世界でも例を見ない厳しい水際対策を敷いており、これ以上の制限が有効なのかと疑問を呈する専門家もいます。

 ニューヨークではオミクロン株感染者の確認で動揺が広がりましたが、やるべきことはこれまで通り、大規模な検査、接触者の追跡と隔離、マスク着用、ワクチン接種によるコロナとの共生で、水際対策はもう現実的ではないという考え方が強まっているのを感じます。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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