コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

富士フイルムが開発 新型コロナ肺炎の画像診断支援ソフトの実力

新型コロナ肺炎画像診断支援ソフトウエア 「COVID-19肺炎画像解析プログラム」/富士フイルム提供
新型コロナ肺炎画像診断支援ソフトウエア 「COVID-19肺炎画像解析プログラム」/富士フイルム提供

 新型コロナウイルス感染拡大の第6波に、予断を許さない状況が続いている。病院では院内のクラスター発生を防ぐため、入院や救急搬送の受け入れ時に患者の感染有無を確認するためのPCR検査や抗原検査と併せて、胸部CT検査を行う場合がある。

 こうした検査の増大に伴う医療現場の負担を軽減するため、今年6月に「富士フイルム」(東京都港区)がAI(人工知能)を活用した新型コロナ肺炎の画像診断支援ソフトウエア「COVID-19肺炎画像解析プログラム」を発売した。患者の胸部CT画像をAIが解析し、新型コロナによる肺炎の可能性を評価する。国内企業の開発では初となる。

 どのように診断支援をするのか。同社・メディカルシステム事業部ITソリューション部の成行書史・統括マネジャーが言う。

「このプログラムは、当社の3D画像解析システム『シナプス ヴィンセント』向けのアプリのひとつになります。読み込んだ患者さんのCT画像に、COVID-19肺炎の特徴的な画像所見が含まれる可能性(確信度)を『高・中・低』の3段階で表示します。また、その疑いのある部分を自動で色づけして3D画像で表示し、読影する医師の診断を支援します」

「シナプス ヴィンセント」とは、CTやMRIなどの断層画像から高精度な3Dを描出・解析して、医療画像を立体的に可視化することができるシステム。国内では、中規模以上の病院を中心に1400以上の施設に導入されているという。

 新型コロナ肺炎の特徴的な画像所見とは、肺の陰影がすりガラスのような「すりガラス影」、網状の構造を持つ「網状影」、不透明な白い陰影の「浸潤影」など。マーキングされた疑いのある部分は、「水平」「前後」「垂直」の3種類の切断面と、どの方向・角度からも見られる3D表示が可能だ。

「AIには、COVID-19肺炎、COVID-19以外の肺炎、非肺炎のCT画像データを合計で約3000症例学習させています。ただし、このプログラムはCT画像情報のみを解析するものであり、COVID-19の感染の有無や肺炎の有無を判定するものではありません」

 あくまで目的は医師の読影の補助ではあるが、PCR検査結果(陽性)と比較した試験では「感度87.5%」(高・中と評価される割合)という比較的高い性能が示されている。

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