みんなの眼科教室 教えて清澤先生

合わない眼鏡をかけ続ける恐ろしさ さまざまなトラブルにつながる

写真はイメージ

 眼鏡が合っていない人のうち、およそ7割以上が過矯正です。「よくない」とわかっている過矯正の眼鏡を選んでしまうのは、近業が多くなった現代でも遠くを見る能力を示す「遠見視力」信仰があるからです。そのため、眼鏡を購入する際に「遠くがよく見えるように」作ってしまいがちになっています。

 遠視の患者さんには、凸レンズの眼鏡を処方することになります。この場合、ピントが合わせにくくなる調節麻痺に対しては、サイプレジンやアトロピンなど普段使うミドリンPより強い薬を用いて、しっかりと眼内の毛様体筋の緊張を取り去ってから屈折値を求める必要があります。

 遠視の眼では、調節の努力をすると何とか遠方の指標が読めてしまいます。本人がピント合わせをあきらめて放棄してしまえば、その眼はやがて弱視へと進行します。

 眼鏡の使用を嫌う親子であれば、無理やり何とか遠方の視標が見えれば、メガネを希望しないこともあります。しかし、近方での視力を測るとよい視力が得られていないことが多いのです。

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清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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