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「中皮腫」の治療は免疫チェックポイント阻害薬が活躍する時代へ

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 中皮腫の多くは壁側胸膜に顆粒状腫瘤で発症し、臓側胸膜へ進み、さらにすべての胸膜面に進展します。肺、内胸筋膜、縦郭脂肪組織、横隔膜筋層にも及ぶ場合があります。胸に水がたまる胸水貯留によって発見されることが多く、CTなどの画像で胸膜の肥厚や腫瘤が確認され、見つかる場合もあります。

 治療は、進行に応じて手術、放射線治療、薬物療法が行われます。

 手術は胸膜・肺・横隔膜・心膜を一塊で切除する「胸膜肺全摘術」と、すべての壁側胸膜と臓側胸膜を剥がして肺を温存する「胸膜切除/肺剥皮術」があります。前者は手術後のQOL(生活の質)低下、手術関連死が問題となり、後者は緩和的手術ではあるもののQOLの維持や手術関連死が少ないことから選択肢のひとつになります。

 放射線治療は根治的には適応が少なく、疼痛緩和などの目的で用いられます。手術不能の場合は、内科的に胸水貯留に対して「胸膜癒着術」を行い、QOLの維持に努めます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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