最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

「いま死ぬわけにはいかない」小さな子を持つ余命半年の患者に言われ…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 すると院内で回診していると、入院したくない、早く退院したい、こんな診療なら家でもできるんじゃないかという不満を口にする患者さんが少なくないことにも気付くようになるのです。

 患者さんのそんな言葉に、当時の私は「一生懸命に病院の仕事をしているのに早く帰りたいというのは何事だ」とすら思っていましたが、いまでは逆に、病院でしかできない医療って何か、そして「在宅医療」では何ができるのかと考えるようになりました。

「在宅医療」では病院と変わらず、薬や道具を準備して医療を行える。さらにそれが保険医療で行えれば、病院の医療を在宅に置き換えることはできる。しかもそのことを患者さん側が強く望んでいて、医療スタッフも納得しているのなら、病院ではなく在宅で療養するのが一番なのでは……。そう確信するようになっていくのでした。

 小さいお子さんのいる40代の女性の患者さんがいました。その方は子宮がんを患い、余命6カ月の宣告を受けてから病院で2カ月過ごした後に、「早くお母さんに会いたい」というお子さんのために在宅医療に切り替えました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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