上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

冬の脱水を防ぐ水分摂取は「出た分を補充する」を心がける

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

「トイレが近くなるのが嫌だ」という理由で、水分摂取を控えている高齢者は少なくありません。これは、心臓にとって最も良くない習慣のひとつです。仮に1リットルの水を飲んでも、そのまますべてが腸管から吸収され血管の中に入るわけではありません。状況にもよりますが、口から飲んで血管内に移行する水分は、摂取した量のおよそ3分の1から半分程度です。それ以外は体の中の組織などに潤いを与えるために使われます。ですから、意識的に水分摂取を控えていると、脱水になるリスクがかなり高くなります。

 一般的に排尿の回数は1日7~8回といわれます。これに、就寝中の夜間に1~2回、トイレに行くのが普通です。逆に言えば、トイレの回数がそれよりも少ない人は摂取している水分の量が足りていないと考えられます。その場合、意識して水分を多く摂取するようにしましょう。1日に3リットル以上の水を飲むといったように極端に多く摂取しなければ、水の飲みすぎによる健康トラブルは起こりません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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