上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

冬の脱水を防ぐ水分摂取は「出た分を補充する」を心がける

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■水分制限が必要な病気の人は主治医の指示に従う

 心臓病の中には、治療の一環として水分制限が行われるケースがあります。うっ血性心不全がその代表的な病気です。われわれの体には、血流を維持するために一定量の水分をためる仕組みがあります。体内の水分が減ると、水分をためるホルモンが分泌され、体液の排泄が最小限に抑えられます。ところが、心不全で心臓の機能が落ちると血流が不十分になることなどで、実際には水分が減っていないのに、減ったと認識して体液量を増やしてしまいます。体液量=血液量が増えすぎると、血液を全身に送る心臓の負担は大きくなります。ですから、心不全の患者さんは、心臓の負担を減らすために水分制限が必要になるのです。

 高度にうっ血がある心不全の場合、利尿剤を使って体内の水分量を減らすケースもあります。しかし、それでもある程度の水分は摂取する必要があります。利尿剤が効かないくらいの脱水状態になると、今度は腎臓への血流低下から尿が作られなくなり、命の危険さえ招いてしまうからです。

4 / 5 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事