慢性蕁麻疹は原因の特定や除去にこだわらずまず薬物治療を

自己判断で薬をやめてはいけない
自己判断で薬をやめてはいけない

 蕁麻疹は、コロナに限らず、ワクチン接種後に起こることも珍しくない。ほとんどは一度だけか、繰り返しても6週以内に起こらなくなるが、原因のはっきりしない慢性蕁麻疹の場合は、自分自身では症状が出るのを避けられない。ずっと治らないのか?

「慢性蕁麻疹は『治る』病気です。重症例でも薬なしで症状が出ないようにすることも可能です」

 こう言うのは、重症慢性蕁麻疹患者を多数診ている日本大学医学部付属板橋病院皮膚科助教の葉山惟大医師。

 蕁麻疹には、特定の刺激や負荷で皮疹を誘発する「刺激誘発型」の蕁麻疹と、原因不明の「特発性蕁麻疹」とがある。

 刺激誘発型には、食物アレルギー、寒さや冷たさなどの寒冷刺激に反応して皮疹が出る寒冷蕁麻疹、汗によるコリン性蕁麻疹、日光に当たって起こる日光蕁麻疹などがある。これらは原因を除去することで蕁麻疹が出るのを避けられるが、実は、刺激誘発型の蕁麻疹は全体の3割ほど。

「7割は原因不明の特発性蕁麻疹で、その半数が、症状が6週間以上続く慢性特発性蕁麻疹。患者さんの話をよく聞いて、蕁麻疹に関連していると思われることがあれば可能な範囲でそれを除去してもらいますが、大半が原因不明の蕁麻疹ですし、原因が特定できても完全に除去するのは難しいケースも多々あります。その場合は原因特定、原因除去にこだわり過ぎず、薬の治療に進みます」

■重症例も月1回の皮下注射×3回で7割が改善

 薬物治療はまず、薬で症状を出ないようにする。使うのは、花粉症などにも使う抗ヒスタミン剤だ。眠気などの副作用が少ない非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬を毎日飲んでもらう。通常量でよく効けば続行。効き目が不十分ならほかの抗ヒスタミン剤へ変更したり、薬の量を増やしたり、2種類を併用したりして様子を見る。

「2週間ほど服用してもらい、それでも症状が出るようなら、胃痛や胃もたれに使うH2-拮抗薬、鼻炎に使う抗ロイコトリエン薬を追加します。いずれも蕁麻疹には保険適用外になるため、慎重に投与を検討します」

 重症例にはこれでも効果がない人がいる。その場合、蕁麻疹の治療ガイドラインには、生物学的製剤のオマリズマブ、シクロスポリン、内服の副腎皮質ステロイドのいずれかの使用が記載されている。シクロスポリンは保険適用外、副腎皮質ステロイドは1カ月以内に減量または中止のめどが立たなければほかの治療への変更が検討される。

「私はオマリズマブを使うことが多いです。月1回の皮下注射で、3回の投与で約7割の患者さんの症状が改善します。当院では、重篤な副作用は出ていません」

 ここからがまた専門医の腕の見せどころだ。症状が薬で抑えられることが3カ月間確認できたら、薬の量や飲む頻度を減らしていく。

 抗ヒスタミン剤を1日2剤服用している人なら、4カ月目辺りから1剤に減らす。2~4週間症状が出なければ、2日で1粒。2~4週間症状が出なければ3日で1粒。このように、徐々に減らしていくのだ。

「途中で症状が出たら、薬の量や飲む頻度を調整し、症状が出ない状態を保てるようにします。肝心なのは、急に薬を減らしたりやめたりしないこと。患者さんとしては、症状が出ていないのだから薬が不要なのでは、と思われる方もいます。しかし、自己判断でやめると再発しやすい。時間が必要なことを十分に説明し、治療を行います」

 結果、「薬なしで症状が出ない」が実現できるのだ。

■蕁麻疹の症状

 皮膚の一部がくっきりと赤く盛り上がり、体のあちこちにできる。かゆく、時に焼けるような感じになることも。しばらくすると跡形もなく消えるが、また症状が出る……を繰り返す。塗り薬は効かない。

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