アメリカではコロナによるシャットダウンで多くの人が解雇されました。経済再開後も人々が職に戻らない、それどころか新たに仕事を辞める人が続出している状況が「大辞職時代」と呼ばれているのをご存じの方も多いでしょう。
これが当初考えられていたような一時的なものではなく、コロナをきっかけに「働く」という意味自体がまったく変わってしまったと捉えられ始めています。さらにこの大辞職は「労働者全体のストライキ」であるとする有識者さえいるほどです。
1カ月の辞職率が2.4%以上というアメリカの歴史始まって以来の状況になったのは、2021年春。飲食店や小売・サービス業などで人々が職に戻らないのは、当初は手厚い失業保険が理由と考えられていました。ところが、こうした手当がなくなっても復職しない。そもそもこうした職種は時給が低く福利厚生がないことが多い半面、常に不特定多数の人と対面で働くため感染リスクも高く、別の職種に転職したいと考える人が激増したからです。
しかし、特に若い層でオフィスの仕事を辞める人も増えています。
たとえばリモートワークからオフィスに戻れと言われた時に、子供の世話をどうするのか、十分ではないオフィスのソーシャルディスタンスや通勤での感染の不安、さらにはもともとあった労働環境や人間関係からくる数々のストレスが一気に襲いかかってきて、メンタルをやられてしまったり、そこまでいかなくても「このままではいけない」と考えるようになったからです。
80万人もの死者が出たアメリカでは無理もないと言っていいのではないでしょうか。
これまではワークライフバランスといった聞き心地の良い言葉で語られていた働き方が、コロナをきっかけに生死の問題になり、ビジネスで守るべきものはお金より人の命ではないかという基本的な問題が浮上しているのです。そしてさらにそこに加わったのは、もうひとつ社会不安の深刻な要因となりつつある温暖化です。次回、詳しくお話しします。